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「不安」はあっても「不満」はない 今季オリックスファンが幸せな理由

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/04/30

 前年王者として初めて迎えるオリックス・バファローズの球春。選手たちはもちろんファンの僕たちにとっても何か妙に落ち着かないシーズン開幕だったように思う。居心地が良くないというか、でも心には妙な余裕があるというか、今年こそ日本一になりたいというか、昨年の余韻が未だ醒めないというか。まあとにかく最近25年間の開幕とは明らかに違う心持ちで日本全国のオリックスファンの皆様が開幕を迎えたことは間違いないと思う(笑)。

勝ったり負けたり、負けたり勝ったりのオリックス

 オリックス最後の呪いだった開幕戦の連敗記録は神の子・山本由伸が鮮やかに止めた。

「こりゃ今年は独走でリーグ連覇しちゃうかも!」

 と思ったら翌日から5連敗。西武・山川が劇的復活。楽天黄金先発陣に打線沈黙。

「うーん、やっぱりまだまだ未熟なチームだなぁ。ライバルチームとの差は大きいか?」

 翌日からはビッグボスファイターズと初対戦。あっさり3連勝。

「うんうん、昨年の修羅場をくぐった選手たちはやはり逞しさが違うなあ!」

 そこからはもう勝ったり負けたり負けたり勝ったりと我慢の戦いが今日も続く我らが中嶋オリックス。勝ったら嬉しい。プロ野球ニュースをハシゴしちゃう。負けたら悔しい。プロ野球ニュースなんか観ない。

 プロ野球ファンになって40年近くそれは変わらない。でも最近はオリックスが勝っても負けてもなぜか僕の心の奥の方はいつも穏やかなのだ。

 なぜなのか?

 自分で自分の心を覗いてみて気づいてしまった。

 今の僕はオリックスの戦いぶりに「不安」はあっても「不満」はないのだ。

 

「僅差の勝敗」で浮かび上がる、不満から解放された自分

 もちろん今現在のオリックス・バファローズはチームとして未だ発展途上であり完成度が高いチームとはとても言えない。

 ラオウ、宗、宮城は「実質2年目のジンクス」に苦しみ、新助っ人打者はまたも期待外れ。中継ぎ陣は未だ全く安定せず先頭打者に四球を与えては失点、打線も少ないヒットで効率良く得点をあげる強かさはなかなか身につかず会心の試合などほとんどない。コロナ禍もあり苦しい中を投手力で耐えて勝ちを拾う試合ばかりが目立つ。

 だが一方で山岡、近藤、黒木が復活。佐野皓大も覚醒の糸口を掴みかけ、野口は才能の片鱗を見せ、ビドルは8回の男に定着し、平野佳寿は健在だ。チーム打率は一時1割台まで落ち込む惨状ながら(4月28日現在は.206)オリックスのチーム成績は13勝14敗でリーグ4位。このチーム成績が意味しているのは、苦しいチーム状況下でも指揮官・中嶋聡は打てる最善手を打ち続けているということだ。プロ野球でベンチワークの優劣が如実に出ると言われる「僅差の勝敗」でもそれは明らかだ。

〈2点差以内の勝敗一覧〉(4月28日現在)
1位  オリックス  10勝 3敗
2位  楽天     7勝 3敗
3位  読売     12勝 6敗
3位  ヤクルト   8勝 4敗
5位  西武     4勝 3敗
6位  中日     8勝 8敗
6位  広島     7勝 7敗
6位  DeNA    6勝 6敗
6位  ソフトバンク 5勝 5敗
10位  日本ハム   4勝  9敗
11位  ロッテ    3勝 10敗
12位  阪神     3勝 13敗

 もちろんまだシーズン序盤だし絶対的なリリーフエースがいるかいないかでだいぶ勝敗は変わってくるものではあるがそれでも長きにわたるプロ野球の歴史で格言とされてきたのだから幾許かの説得力はあろうかと思う。

 とにかく僕は25年間苦しめられ続けた

「なぜこんなことをするんだろう?」
「なぜこんなサインを出すんだろう?」
「なぜこの選手を使わないのだろう?」
「なぜこの選手ばかりエコ贔屓するのだろう?」
「なぜなぜなぜ???」

 という「不満」「絶望」「不信感」「やり場のない怒り」から完全に解放されている自分に気づいたのだ。