作家で元東京都知事の石原慎太郎さんの妻・典子さん(84)が3月8日に他界した。夫の死からわずか1カ月余りのことだった。
四男の画家・延啓さんが月刊「文藝春秋」のインタビューに応じ、70年近くにわたり連れ添った父と母の秘話を明かした。
◆◆◆
延啓さんは、母・典子さんの葬儀の様子をこう振り返る。
「葬儀の最後、母が荼毘に付されるとすぐ上の兄宏高(衆議院議員)が、会場の端でひとり号泣していました。日頃はクールに実務を進める兄の頬に涙がつたうのを横目で見ながら、私たち4人兄弟それぞれに違った形で様々な母との物語があるのだろうと思い胸にこみ上げるものがありました。
父の死については医師から余命3ヶ月の宣告もあり、どこか覚悟していたところがありましたが、突然だった母の方は亡くなって1カ月以上たった今でも事実を受け入れられない、というか受け入れることを拒否している自分がおります」
典子さんは18歳で慎太郎さんと結婚。石原家は家父長制が色濃く残る家庭で、典子さんにとっては夫に尽くすことが何よりも大切なことだった。「政治家・石原慎太郎」のイメージを守るために常に気を配り、時には夫の奔放な振舞いを身を挺して諫めることもあったという。
「私の入学試験の保護者面接に同伴する約束を父がヨットに乗るためにすっぽかそうとした事があったそうです。日頃は一歩下がって何も言わない母も、こういう時は『何考えているんですか!』と怒鳴ってタックルせんとばかりに父を捕まえたそうです。母は良識を持って父が道を外れそうな時には必ず引き留めにかかったことでしょう」