5日、スピードスケート女子の高木菜那(29)が現役引退を発表した。都内で開かれた会見で高木は「未練がないわけではない」としながらも、「自分の意志で高木菜那として氷の上に立ち、戦えたことが引退を決意したひとつの理由」と語った。

 平昌五輪では金メダル2つ、北京五輪では銀メダルを獲得していた高木。妹の美帆(27)とは同じ種目で切磋琢磨を続けていたが、姉妹の知人は「週刊文春」の取材に「2人は真逆」と話していた。高木姉妹の成長秘話を報じた当時の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2022年2月24日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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「2人は真逆」


 団体パシュートでは、ゴール目前の転倒で銀に終わった髙木菜那(29)と美帆(27)。同じ種目で切磋琢磨を続ける姉妹だが……。

 スポーツ紙デスクの話。

「先に五輪に出たのは妹です。中3でバンクーバーに出場し、天才少女と騒がれた。その屈辱をバネに姉はソチに出場したものの、逆に妹は代表落ち。初めて揃って出場した平昌で、姉が2個の金、妹が金銀銅を獲得したのです」

平昌五輪では、姉妹で計5個のメダルを手にした高木菜那(左)と美帆(右)©JMPA

 地元・帯広の「高橋まんじゅう屋」の高橋美哉氏は、「2人は真逆」だという。

「菜那ちゃんはイケイケどんどんタイプ。『ソフトクリーム大盛りで』と言うので、『そんな大盛りって言ったら小盛りになるよ』と返すと『てへっ』と笑うお茶目な子です。美帆ちゃんは石橋を叩いて渡るタイプ。私が体調を崩した時に、高3だった美帆ちゃんが店を手伝ってくれたのですが、計算ミスは一度もないし、お焼きの在庫数を聞いても即答できる利発な子でした」

 姉妹が通った帯広南商業高校スケート部時代の恩師・東出俊一氏もこう語る。

「菜那は要領がいい。例えば職員室でコピーをしたい時、どの先生にお願いすればいいか相手をよく見ている(笑)。周りを見る能力に長けています。美帆は理詰めで自分が納得したら行動する。『この練習の意図は何ですか?』と質問されたこともあった。遠征に向かう飛行機では教科書を開いて勉強する。読書が好きで『心を整える。』(長谷部誠著)を読んでいたり、成績もトップクラスでした」

 菜那は高校卒業後、11年から日本電産サンキョーに所属。平昌での活躍で多額の報奨金も贈呈された。

「『一番以外はビリ』と語る永守重信会長の意向で、金1個につき2000万で計4000万の報奨金、さらに3階級特進で係長級に昇進しました」(前出・デスク)

 一方、美帆は日体大卒業後、17年に同大に就職。現在は広報課職員だ。松浪健四郎理事長に尋ねると、

「うちは金でも報奨金は一切出ないし、昇進もありません。給料も同年代の同職種と同じで、特別な手当もない。プロになれば稼げるだろうけど、彼女はそれを良しとしないタイプ。将来指導者になりたいという思いもあるんです」