昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/04/25

皇族の婚姻の自由

「眞子さま問題」を語る際、「国民」という言葉が頻出する。歴史学者の小田部雄次は「今回の結婚を疑問視している国民は多い。皇室の方々にもプライベートはある。しかし「私」を抑えて人々のために活動することで、国民から崇敬の念を抱かれ、信頼を得てきた面がある。眞子さまの希望を優先した今回の結婚で、裏切られたと感じる国民もいるだろう」と述べる(共同通信原稿、『北海道新聞』2021年9月2日)。

 秋篠宮も「多くの人に納得してもらい喜んでもらう状況を作る」よう小室に求めた(2018年11月記者会見)。この「多くの人」が意味するところも、「国民」と同じであろう。

 これらの発言は、皇室が国民統合の象徴であるべきだとの理念に基づく。

 明治期から高度経済成長期まで、たしかに、皇室はこの国の人びと(国民)のモデルであった。しかし、人びとが多様化したいま、皇室は人びとの目指すべき理想の位置にはいない。そうだとすると、逆に、多様性そのものを象徴する皇室を目指す方向もあるだろう。

「国民」、場合によっては「世間」を背景に、伝統や公(おおやけ) 性を強調し、1人の女性皇族の自由を制限することが、これからの皇室にとって好ましいかどうかはよく考える必要がある。

眞子内親王は、本人と小室さん、双方の家族に対する誹謗中傷のため、複雑性心的外傷ストレス障害(PTSD)となっていた。 ©文藝春秋

 一般の人が結婚するとき、親など周囲の納得と理解が必要だとの考えも成り立つが、必須ではない。親や周囲が反対しても、憲法上、婚姻は両性の合意だけで成立する。親が勝手に婚姻相手を決めること、本人が決めた相手との結婚を妨害することは、婚姻の自由の権利に反する。

 男性皇族の場合、結婚相手は皇室に入る形となるため、たとえば外国籍のパートナーを選択することには問題が生じる可能性が出る。そこで、皇室典範は、男子皇族の婚姻に限り、皇室会議の議を経ると定め、婚姻の自由にタガをはめた。一方、女性皇族の場合、結婚すれば皇族でなくなるため、皇室会議の了承を得る必要はない。女性皇族の婚姻は、現行法下では自由である。

 ただ、女性皇族の婚姻の自由が、日本国憲法第24条に基づくかどうかについては憲法学者の間で議論が分かれる。天皇制は身分制の“飛び地”であり、憲法の人権条項は天皇・皇族には適用されないとの説が近年有力になっているのだ。

 恋とは自己決定である。恋愛に関する皇族の自己決定が、「国民」の納得と理解の名のもとに阻害される事態を、憲法学者たちはあまり重要視していない。私は、皇族の人権の観点から、憲法学者たちはより現実的な議論をすべきだと思う。

z