大型連休のあいだホークスは大型連勝を決めた。黄金週間でキラリ輝く白星をずらりと並べてみせた。ひと昔前は「どんたくシリーズ」と呼ばれた(そういえば最近聞かなくなった)5月3日~5日の本拠地オリックスバファローズ戦、6日~8日の敵地での千葉ロッテマリーンズ戦をすべて勝って見事6連勝したのだ。
5月に入ってからのホークスは本当によく打っている。
上記6試合のうち、じつに5試合で2桁安打をマークした。唯一1桁だった5日のオリックス戦にしても9安打9得点と攻撃は活発だったし、7日ロッテ戦に至っては20安打で16-0という別格の圧勝を見せた。
それもスゴイが、何がスゴイかというと山本由伸が投げてきても(3日)、佐々木朗希が先発(6日)してきても、勝ったのだ。
他にも宮城大弥やその時点で両者とも防御率0点台だった石川歩、エンニー・ロメロと対戦。どれだけ贔屓目に見ても苦戦を覚悟せざるを得なかったというのが本音だ。しかし、若鷹軍団はそのエース級たちを次々となぎ倒していった。
彼らは打席で、とにかくしつこかった
まずはその口火となった3日の試合だ。難敵の山本から10安打7得点だ。最初の1点は相手守備のミスによるものだったが、続く得点は三森大貴と牧原大成の連続タイムリー。そして極めつけは3-3で迎えた6回裏、死球と連打で攻め立て1アウト満塁として鷹が誇る主砲・柳田悠岐が左中間のホームランテラスへ3号満塁本塁打を放った。これが決勝打となった。
山本が7失点したのは自己ワースト。10安打を浴びたのは同タイ。そして、グランドスラム被弾は初めてだったようだ。
何より攻略したホークスの打者たちを褒めるべきだが、それには伏線があったと考えている。
彼らは打席で、とにかくしつこかった。2回裏の中村晃は三振に倒れたが、粘って9球も投げさせた。3回裏は“早打ち”の印象が根強い牧原が6球目でフォアボールを選んだ。5回裏は先頭の柳田が11球目を二ゴロ。グラシアルは初球打ちでアウトになったが、中村晃と柳町達は連続四球でチャンスメイク。上林誠知はそれを生かせず凡退したが、6球を投げさせてのアウトだった。
この5回を終えた時点で、山本の球数はちょうど100球に達していた。次の回に柳田が満塁弾を打ったのは124球目のことだった。
山本は体のバランスを上手く使って投げる投手だから、単純に投球数が増えたからボールの勢いが落ちたと論じるわけではない。だが、疲弊するのは体だけでなく心も同じ。ホークス打線が粘りに粘って山本を追い詰めたのは間違いなかっただろう。
そして、ホークス打線がしつこく粘ったのはこの日だけではなかった。
4日の宮城に対しても、2回裏には今宮健太が8球目を左前打にし、続く柳田は三振を喫するも7球投げさせるなど5回終了までに105球を費やさせ、1点しか奪えなかったがマウンドから引きずり下ろした。
そして、6日の佐々木朗だ。当たり前のように160キロのストレートと150キロのフォークを操る怪腕に対してボールをじっくり見る余裕などない。とにかく狙いを定めて振りに行った。だけど、食らいついた。たとえば佐々木朗から1点を奪う直前の場面だ。4回表、1アウトから柳町が160キロをとらえて左翼フェンス直撃の二塁打を放った。続くは上林だ。初球はボール、2球目と3球目はファウルにして1ボール2ストライクと追い込まれた。次の4球目は163キロのストレート。これもファウルにした。
上林は異次元の剛速球を待ちながら、見たことのない速さのフォークに対応していかなければならなかった。5球目は146キロの外角低めへのフォークが来た。これについていきバットに当てファウル。6球目、162キロをファウル。7球目も162キロをファウル。粘られれば、佐々木朗の表情も少し変わってくる。8球目、149キロの内角低めボールゾーンへのフォーク。上林のバットはついに空を切った。
悔しい三振。だが、上林は役割を果たした。2アウト二塁から次打者の今宮が162キロを右中間に弾き返して難攻不落の佐々木朗からタイムリー二塁打を放ったのだった。
佐々木朗から奪った得点はこの1点のみだが、6回91球で早めに降板させたことが試合終盤の劇的なドラマにつながった。9回表1アウトから中谷将大の代打同点1号2ラン。そして延長11回表に2点を勝ち越して勝利を決めた。