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「イヤです、答えません」発言に見えた生き様…巨人の大エース・菅野智之を応援したくなる理由

文春野球コラム ペナントレース2022

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「イヤです、答えません」発言に潜む菅野智之の深淵

 その一方で、菅野選手が記録に未練を残さず、スパッとやめてしまう可能性もかすかに感じてしまいます。

 僕は芸能の仕事をしていることもあって、どうしても人の「キャラクター性」に目が行ってしまいます。僕のなかで菅野選手は「昭和の男」というイメージがあります。

 今どきのアスリートは、大谷翔平選手のようなソツのない発言をする好青年が愛されています。大谷選手がコメントして炎上したことなど、一度もないのではないでしょうか。炎上を回避する思考回路でも搭載されているのか? と思うほどです。

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 一方、菅野選手はどうでしょうか。マウンド上で口を真一文字に結び、ヤンチャでも好青年でもなく、年齢以上にふてぶてしく見えるたたずまい。判定に納得がいかない時など、露骨に「はぁ?」と不満な態度をとったり、ニヤッとニヒルな笑みを浮かべたりします。もし、佐々木朗希選手が菅野選手と同じふるまいをしたら、球審によってはさらなる大騒ぎに発展するでしょう。

 菅野選手は発言もエッジが効いています。2020年オフにポスティングシステムでのMLB行きを断念して巨人残留を表明した際、記者会見で「交渉時にどこが納得できなかったのか?」と聞かれた菅野選手は、こう答えたとされています。

「イヤです、答えません」

 本人からすれば冗談だったのかもしれませんし、機嫌が悪かっただけかもしれません。でも、僕はこの発言に菅野選手の生き方がにじみ出ていると感じるのです。

 だって、質問に答えたほうが楽なのです。本音を隠し、当たり障りないことを言えばいいのですから。あえてイバラの道を選ぶところに、菅野選手の職人気質が透けて見えます。

 入団までのプロセスも、菅野選手の「昭和っぽさ」を感じます。原辰徳監督を伯父にもち、「巨人以外は入団しない」と表明。他球団からの指名を拒否して浪人してまで巨人にこだわる、「THE昭和」な入団の仕方でした。菅野選手以降、「巨人以外の指名はお断り」というアマチュア選手は記憶にありません。

 バッシングの嵐に耐え、結果でアンチを黙らせてきたのが菅野智之という野球選手なのです。「菅野智之のピッチングができなくなった」と、あっさりとユニホームを脱いでしまう姿も想像できてしまいます。

 巨人で200勝を目指すのか、それとも衰えがきたらあっさり引退するのか、それともメジャー・リーグへの夢を追うのか……。どの道を選んだとしても、年輪を重ねた菅野選手に魅力がないはずがありません。渋みが増した職人が投げる1試合、1試合をこの目にしっかり焼きつけていきたいと思います。

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