初心者に向けた料理番組は、これまでも数多く放送されてきた。タレントの起用などで、おもしろさを売りにした料理番組もめずらしくない。そんななか、一段と目線が低く、かつこれまでにない独特のおもしろさがある料理番組が4月から始まった。『DAIGOも台所』のことだ。

「DAIGOも台所」公式Twitterより

 同番組のMCは、ミュージシャンでタレントのDAIGO。料理を教える先生は、辻調理師専門学校の講師に加え、料理コラムニストの山本ゆりがつとめている。SNSでも人気を集める同番組の内容をふりかえり、その魅力について考えてみたい。

「じゃがいもを剝く」のが一大ミッション

 初回の放送で、DAIGOは番組への個人的な意気込みを次のように語った。

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「個人的な目標としては、やっぱり家庭で、台所で、戦力になりたい。娘のお弁当を1人でつくる。これをですね、僕は最終目標に掲げてがんばっていきたいと思います」(4月4日)

 これまで、バラエティ番組の料理コーナーを担当した経験はあるDAIGO。しかし、その腕前は妻の北川景子に“戦力”として認められるほどではないのだろう。等身大の目標設定。娘のお弁当づくりを目標にするパパの料理番組は、これまであまり例がないはずだ。

 では、そんな料理に不慣れなDAIGOの番組での役回りは何か。一般的な料理番組だと、先生を補助するアシスタントが彼の役目になるはずだ。が、この番組はちがう。初回に放送されたDAIGOのはじめての調理シーン、じゃがいもの皮むきの場面は、彼の番組内でのキャラクターを強く印象づけるものだった。

 DAIGOはまず、「僕がやるんですか? 早速」と一瞬躊躇したような反応。ピーラーをじゃがいもに押し当てるものの、「こっちじゃないですよね、こうですよね」とピーラーを動かす向きを先生に確認する。「そうですね。それが一番やりやすいかなと思います」と先生からOKをもらうと、「わかりました。先生、いきますよ」と気合を入れる。それに先生が「はい」とガッツポーズで応答。で、ようやくピーラーでおずおずと皮を剥きはじめるのである。

 繰り返される確認。先生による応援。引き伸ばされる一つひとつの工程。同様のやりとりは、他のシーンでも見られる。じゃがいもの皮をピーラーで剥くこと、大さじ1の水を計量すること、魚肉ソーセージを5ミリ幅にカットすること、パスタの鍋へ投入すること――。DAIGOの手にかかると、これらがあたかも一大ミッションのように扱われるのである。

 そう、この番組のDAIGOにとって、すべての工程はそのつど立ち止まりクリアしなければならないミッションなのだ。通常の料理番組では一瞬で通りすぎるところに、番組はフォーカスを当てる。それは料理初心者にとって、ていねいな説明かもしれない。料理に挑戦する者の心理的なハードルも下げるだろう。