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千賀滉大の“お化けフォーク”も体感できる…ソフトバンクの野球観戦革命がすごい

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/06/04
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 テクノロジーの進化により、昨今の球界は大きな変革期を迎えている。

 そんな一文を、佐々木朗希投手が表紙の「Number1052号」に筆者が寄せたホークス・千賀滉大投手のインタビュー原稿で記した。

 野球パフォーマンスが可視化、数値化されるようになったことで、従来は非常識だと思われたことが実は理に適っていると考えられるケースも散見される。

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 そのような意で用いたのだが、テクノロジーの進化や発達はスポーツ観戦を楽しむ我々の未来も大きく変えていくのではなかろうか。

 そんな未来への第一歩を、先日体験させてもらった。

現実世界では立ち入れない「選手ロッカールーム」も再現

<ソフトバンクと福岡ソフトバンクホークスが協業してPayPayドームをメタバース化>

 球団からそのような表題のプレスリリースが送られてきたので、5月27日の交流戦・カープ戦の日に行われたメディア説明会に参加した。

 この日公開された取り組みは次の二つだった。

 まず1点目だ。

<バーチャル空間に再現したPayPayドームへの来場体験ができるサービス「バーチャルPayPayドーム」の提供>

 これは、3Dオブジェクトで再現したPayPayドームにスマホやパソコンなどのブラウザーからアクセスし、利用者は分身であるアバターを操作してドーム内や周辺を自由に散策して「来場体験」ができるサービスだ。

 興味深かったのは、現実世界ではチーム関係者以外は立ち入ることの不可能な「選手ロッカールーム」を訪れることができるところ。筆者は以前担っていた球団オフィシャルメディア時代に数回ロッカールームに入ったことがあるが、かなり再現されていると感じた。今後は来訪可能エリアをさらに拡大していく方針だという。

 加えて、来場者同士がチャットでコミュニケーションをとることもできるため、離れた土地で暮らす友人と一緒にアクセスすることによって同じエリアで「PayPayドームでの野球観戦」を楽しみながら“会話”することもできる。さらに現在はコロナ禍で禁止されているラッパ応援やジェット風船もアバターならばやりたい放題の機能もついている。

 また、国内のスポーツ界では初めて(ソフトバンク調べ)の試みで特許出願済みという「準リアルタイム投球体験」も今回の目玉のようだ。試合中のピッチャーの投球(球速・軌跡)を解析し、準リアルタイムにボールの軌跡をバーチャル空間内に再現する。ユーザーは捕手か左右いずれかの打席の3か所からの視点を選ぶことができる。たとえば試合視聴中に千賀投手がさっき投げたばかりの「お化けフォーク」をプロ野球選手視点から体感できるという仕組みだ。CGで球の軌道が再現されるほかに、初速と終速などのデータも確認できる。

 以上をざっくり言うならば、実際にはPayPayドームになかなか来場できないファンが楽しめる「仮想空間サービス」だ。

「バーチャルPayPayドーム」で、ロッカールーム潜入も叶う ©田尻耕太郎

 次いで2点目は、PayPayドームに来場したファンに付加価値を提供する「拡張現実サービス」となる。

<現実空間におけるメタバースの取り組みとして、PayPayドーム来場者へのAR(拡張現実)を活用した新たな体験の提供>

 メディア公開当日の場合は、ドーム外周デッキの7ゲート付近のスポットに行き、QRコードを読み取ってスマホをかざせば、球団公式VTuberの鷹観音海(たかみね・うみ)と有鷹ひな(ありたか・ひな)の動きをモーションキャプチャーによってARでリアルタイムに再現し、会話をするなど双方向型のリアクションで楽しむことができた。

 そして、球場内での試合前練習の時間。やはりQRコードを読み取ってグラウンドにスマホをかざすと、画面の中のドームには飛行船が浮いており、現実世界にはない選手の巨大ポスターが客席上部に現れた。ポスターをタップすれば、選手のプロフィールや成績など詳細情報を見ることができる。さらに、投球解析機能も備わっていた。スマホ越しにフリー打撃を覗けば、打撃投手の投げるボールの初速と終速が表示されるのだ。

「AR」を用いた練習見学の様子 ©田尻耕太郎

 これまでは漠然としていた「練習中のバッターはどれくらいの速さのボールを打っているのか」という疑問が一気に解決した。

 だが、せっかくならばいっそのこと、プロの打者の打球スピードや飛距離、打球角度を示してくれたほうが野球ファンは嬉しいのではなかろうか。

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