岡山県の南東部、瀬戸内市牛窓町鹿忍(かしの)は、対岸に小豆島を望む瀬戸内海沿岸の静かな町だ。

 その町内を通る県道232号を海に向かって進むと、突如として不思議な光景が現れる。

瀬戸内海沿岸に突然現れる水没した建物群

 海を堤防で直線的に仕切って造ったような広い水溜まりに、三角屋根の小屋や自動車、枯れた樹木などが水没し、水鳥が営巣する奇妙な一画。

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牛窓の水没ペンション村

 通称「牛窓の水没ペンション村」と呼ばれる廃墟である。

 廃墟マニアの間では有名なこの物件の存在を、筆者は自身が運営するYouTubeチャンネル「Drone Japan」の撮影地を探す中で知った。

 筆者は2017年からドローンによる廃墟を中心とした空撮動画チャンネルを運営しており、コミックマーケット等のイベントでは、その書籍版でもある同人写真集『蒼穹シアター』シリーズの頒布も行なっている。2019年当時、四国某県に在住していた筆者は、中国四国地方の物件を主に探訪していたのだ。そのうちの一つに「水没ペンション村」があった。

岡山駅到着後はレンタカーで現場へ……

 2019年某日、JR岡山駅に降りた筆者はレンタカーに乗り換え、瀬戸内市方面へと向かった。国道2号を東に進み、岡山ブルーラインを経由して西大寺ICから県道28号に乗り換え、牛窓町に至る。岡山市街から約40分の道のりだ。

 鹿忍郵便局のある十字路を右折し、海に向かって500mほど南下すると、左手の茂みが途切れた先に、海側の視界が開ける場所に出た。

近くで見ると建物の老朽化ぶりがよく分かる

 干潟と思われる広く平らな水面に、木造の小屋が複数建っている景色が目に飛び込んでくる。周辺には立ち枯れた木々が並び、水鳥が何食わぬ顔で止まっている。まるでシュールレアリスム絵画のような光景だ。