国道といえば、日本で最上級の道路であり、交通量が多く整備が行き届いた立派な道をイメージする人が多いだろう。しかし、そんなイメージとは裏腹に、道幅が狭く舗装は剥がれ、路面には無数の落石が転がっているという国道も存在している。私はそんな酷い国道に魅力を感じて全国を巡り、親しみを込めて“酷道”と呼んでいる。
国道に限らず、道路というのは人や車が通るために造られる。それなのに、毎年1年のうちたった数か月しか通行できない“開かずの国道”が存在する。
積雪、路面凍結、土砂崩れ……
岐阜と富山の県境を越える国道471号は、例年11月から翌年6月までの7か月程度、冬季閉鎖される。山間部を通過することが多い酷道では、冬季は積雪や路面凍結のため閉鎖されることも多いが、それにしても7か月というのは特に長い。
また、この区間の積雪は数メートルに及ぶため、その影響によって道路設備が損傷し、冬季閉鎖が解除されても復旧工事に伴う通行止めが続くことがほとんどだ。雪の重みでガードレールや道路標識が壊れたり、雪崩や土砂崩れによって大量の土砂が路面を覆ってしまうためだ。
そうした復旧工事が終わって、ようやく通行できるようになるのは、例年7月から9月頃になることが多い。そして、11月には再び冬季閉鎖が始まる。そのため、1年のうちこの道を通行できる期間は、わずか数か月しかないのだ。道路の存在意義を改めて考えさせられるが、これが国道だというのだからなおさら驚きだ。
“規制解除”された週末に行ってみた
この酷道を走るには、情報収集から始まる。
「9月だし、もう大丈夫だろう」
そんな安易な気持ちで現地を訪れるとゲートが固く閉ざされており、富山まで行く旅行計画の断念を余儀なくされた――そんな悲劇を、私は過去に何度も経験している。
また、9月にようやく開通したとしても、油断は禁物だ。台風や大雨によって再び通行止めとなる可能性も大いにあるからだ。
よって、この区間を走りたければ、規制が解除された直後に訪問するのが確実だろう。私も数年前、規制が解除されたという一報を受けたその週末、開かずの国道の走破に挑んだ。