ーー作中で印象に残っているシーンがございましたらお願いします。
松尾 沢山あります。特に5話の渋谷でデートしてるところ、「勝田さん、どこかで見てました？」と思うくらい、街の雰囲気やレコード屋、喫茶店が当時とそっくりで驚きました。毎回ネームを妻にも見せてるんですけど、そのたびに夫婦の絆が強くなっています（笑）。
そういえば、居酒屋で告白して妻をモデルにした「津間さん」が泣くシーンを読んだ時に、妻が「なんであのとき泣いたのか思い出した」ってぼそっと言ったんですよ。僕の原作を読んだときは思い出さなかったのに……やられた、と思いました。さすが勝田さんです。
仲野太賀さんの役作りを見て「申し訳なくなった」
――今回のドラマについてもお伺いしたく思います。ポスターを拝見して、主演の仲野太賀さん、松尾さんにかなり寄せている印象を受けました。
松尾 体型を僕に寄せるために、晩御飯を食べた後に牛丼を食べに行っていたそうです。現場で太賀くんと会った時、服がクタクタだったり、ジャージだったりするんですよ。もっと「オシャレな人」ってイメージだったから不思議だったんです。でも、増量して自分のオシャレな服が合わなくなったから、ずっと似たような服を着てたことが判明して……。それを聞いて本当に申し訳なくなってしまって。「俺が痩せればよかったです」って。
――監督の井上剛さんは『あまちゃん』や『いだてん～東京オリムピック噺～』も撮られていますね。今回のドラマ化について、松尾さんが強く井上さんを希望されていたとお聞きしました。
松尾 井上さんからは「偉人でも故人でもないのにドラマ化するのか」と言われました（笑）。井上さんが撮るものはどれも素晴らしいので、必ず面白い作品になるという確信があります。
実はここだけの話、1話冒頭から驚くほどすごい人が出てきて……言いたいなあ（笑）。言うのは簡単なんですけど、言ったら楽しみを奪っちゃうから、絶対知らずに見た方が面白いと思います。ただ、一つ言っておきたいのは、ドラマ『拾われた男』は原作を大胆にアレンジしていて、脚本もとても面白いのですが、フィクションも多く散りばめられています。ドラマをご覧になった後は、ぜひ原作の『拾われた男』も読んでもらいたいです。
