偶然拾った1枚の航空チケットがきっかけで人生が変わった——。

 そんな「シンデレラストーリー」を経験したのは『SP 警視庁警備部警護課第四係』『シン・ゴジラ』などの演技で注目され、今や個性派俳優としての地位を揺るぎないものにした松尾諭さん。松尾さんが自身の半生を綴った自伝“風”エッセイ『拾われた男』は、仲野太賀さん主演でドラマ化、マンガ化など、様々な展開を見せている。

 インタビュー後編では、松尾さんにマンガ版・ドラマ版『拾われた男』についてお話を伺った。前編を読むにはこちら

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渋谷のデートシーンで「やられた、と思いました」

――『拾われた男』は、勝田文さんによってマンガにもなっています。松尾さんが勝田さんをリクエストされたきっかけをお聞かせください。

松尾諭さん(以下、松尾) 小学館の漫画編集者の方と話す機会があって、「もし僕が主演で映像化するとしたら、面白い原作の漫画ありますか?」って聞いたら「主演は松尾さんじゃないと思うけど、これ面白いですよ」と薦められたのが勝田さんの『風太郎不戦日記』(※編集部注:作家・山田風太郎の『戦中派不戦日記』のコミカライズ。講談社より全3巻発売中)でした。

 早速読んでみたら、すごく面白くて。特に、敗戦の玉音放送の後の表現が素晴らしくて感動したんです。漫画化の話をいただいた際にそのことを思い出して、「あの人に描いてもらえたら最高なんですが」とダメ元でお願いしました。

 勝田さんの作品はどこか破天荒なのに、女性的な品があって、僕みたいな品のない人間の書いた本を描いていただくならピッタリかなと。『風太郎不戦日記』もスマートな面白さがありますよね。お受けいただけて本当に良かったです。

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ーー元々マンガは読まれていたのですか?

松尾 前ほどは読んでいませんが、好きですね。上京した時は千冊近く持ってきました。ほとんど数年前の引っ越しで処分してしまって、今は本当に大事なものだけ残しています。