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「私の体で私の借金払って、なにが悪いねん」

——根性ある。

「私さあ、結婚する前の彼氏の借金を返すために、足突っ込んだんよ。彼氏に、私の名前でお金借りてあげてたから。その3000万の借金を私が返す代わりに別れてくれ、言うて、別れたん。若かったから、3000万くらい直ぐに払えると思ってたからなあ」

——すご~。

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「お金のためやったら、できるんちゃいます? 別に悪いこと、違う。私の体で私の借金払って、なにが悪いねん、思ってたね」

——めちゃめちゃ主体的。体は壊せへんかった?

「まったく大丈夫。定期的にマイシン、膣の中に入れる抗生物質やね。それ飲むとか、自分でケアしてきたしね」

かんなみ新地 

——そうなんや。

 2階を見せてほしいと頼んだ。

 少しの間を置いて、「う~ん、ま、いいか」と応じてくれ、「改装したばっかりやから、うちは特別きれいで」と。お言葉に甘えて、急階段を上がる。半階分ほど上がったところに、1部屋の入り口。さらに半階分ほど上がったところにもう1部屋の入り口があった。

かんなみの“お店”に潜入「想像以上に狭く…」

「まあこんな感じやね」

 ママが1部屋の戸を開け、電気のスイッチを押すと、暖色の照明が灯った。

かんなみ新地。10月末まで営業が行われていた一室 

 シングルの敷布団が敷かれて、3段のシェルフがあるのみで他になにもない。あとは布団の前後左右に30~40センチほどの空き空間があるだけ。想像以上に狭く、シンプル極まりない部屋だった。

「いろんな客きたんやろね」

「そうやで。職業選択の自由やと思うわ。女の子かて、働きたくて仕方なくて、ここに来てるんやもの」

 さばさばした口調だった。

 1階に降りて、最後に「これからどうすんの?」と訊いた。

「さあ、どうしよ。私はしばらくこうやって飲み屋で開けていく。1000円とかで、これでいく」

 と言い切った。

 言い切ってから、「(今の飲み屋へは、以前に)上がってた人が飲みに来る。このへん好きな人が『火を消さんといてくれ』って言うてくるけどね」と小さく笑った。

 この稿の最後の最後に、後日、とある人の紹介で会うことができた、もう1人の元経営者がこう言ったことを書きとめなければ。

「警察との根気比べやね。私は引き下がれへんよ。飲食店では家賃払われへんでしょ。ある程度下げてもらうように大家さんと交渉中やけど、厳しいのちゃう? ほとぼり冷めるのを待つだけやね。今、女の子は飛田や松島に行ってるけど、かんなみ再開したら戻ってくる、言うてる」

〈生きていくため、体を売って何が悪い〉

 そういう主旨の宣言文を、かつてかんなみ新地の南東角に、高らかに掲げていたそうである。

写真/井上理津子

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