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球場にもSNSにも飛び交う野次。私たちは選手たちにどんな言葉を届ければよいのだろう

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/06/17

 1998年に「19」としてデビューしてからありがたいことに24年間、絶え間なく音楽を続けて来られている。今はツアー中心だけど、それでも日本の彼方此方で自分の今を落とし込む事が出来るのは幸せな事だと思う。そんな今も旅の合間。

 そんな旅の途中に原稿執筆の話をいただいて、ちょうど名古屋だったり、大阪、そして広島に滞在したりしたので、話は逸れつつも大まかなところで結局はカープが大好きだという話を自分の宣伝にはならないよう気をつけて書こうと思う。

筆者・岩瀬敬吾

SNSで目にした心無い野次を飛ばすおじさんの事

 これを書いている交流戦の最中の雨のある朝、本町のホテルから御堂筋線に乗り新大阪で新幹線に乗り継いだ。前日はお昼にお店の周年も兼ねてのライブだったけど、終演後は他の出演者の皆と食い入るように阪神―日本ハムの試合を観た、というか観させられた。

 青柳がこれ以上ないピッチングで、3点リードを見守る目は皆やはり少年。そうなるか。青柳のピッチングを見てカープに欲しいなと、速報で逆転された事を知り、そう思ってしまうが、負けがこむと応援チームに否定的になってしまう自分の気持ちに猛省してしまう。

 そんな事を振り返っていると、雨の降る中、山陽本線からマツダスタジアムへ続くスロープを登り、ユニフォームを着てコンコースへ向かうファンの行列が目に飛び込んで来る。僕の分も応援してくれよと願い、球場から電車は離れて行く。

 僕の思いも虚しく、その日も雨の負け試合となった。でも全力で応援する姿は選手にその日も届いた事だろう。そういった反面、よくある事とまでは言わないが、心無い野次を飛ばすおじさんの事を書いたSNSの投稿を見かけてしまいガッカリしてしまった。

 そのおじさんと選手には主従関係はもちろん無い。あるとしたらチームのため、ファンのためにと思って戦ってくれる選手の姿だろう。だけど怒りに取り憑かれたそのおじさんは本来吐くはずのない汚くて卑しいその言葉を選手に投げつけた。おじさんの役目は本来声を嗄らして(コロナ禍では難しいが)応援する事なのだが。

マツダスタジアム

 その昔コンコースを少し進んでは「監督やめろ!」と叫んでいるおじさんが居て、その行動には取るに足らないと思わせる何かがあったのか、皆一様に無視を決めていた。1周回りきったおじさんは最後の力を振り絞り、かすれた声で「監督……」とだけ放ってどこかへ消えた。そんな事をふと思い出し、雨の試合の中で汚い野次を飛ばしたおじさんもまた、自分は代弁者でそして選手の奮起を促せると妄想してしまったのだろう。

 大きな間違いへと舵を切ってしまったその行動も、グッと堪えた他のファンも、それを聞いていた選手も、一体自分は何のためにここにいるのか、そう思ってしまわないよう、スポーツのフェア精神に球場全体がしっかり取り組めるよう、もうひとつ前へと進むべきではないだろうか。

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