「週刊文春」の報道以降、次々と明るみになる芸能界の性加害。6月14日放送のNHK「クローズアップ現代」では、「封じられてきた声 映画界の性暴力〜被害をなくすために〜」と題し、当事者の告発や海外の映画業界の取り組みについて報じた。番組内で紹介されたハラスメントに関するアンケートでは「書ききれない」といった答えが寄せられるなど、映画業界に蔓延る性暴力の実態が明らかにされている。
スタジオには、「凶悪」「孤狼の血」などのメガホンを取った白石和彌監督がゲストとして登場。番組内で白石監督は「いたたまれない。言葉が出ない」と語り、俳優・女優、制作スタッフらへのハラスメントに対し「今このタイミングで色んな声を出すことが重要」と強調した。
被害者が声を上げるに至った背景には何があったのか。女優たちの告発を詳報した小誌の記事を再公開する。(初出:「週刊文春」 2022年4月14日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
◆◆◆
映画監督の榊英雄氏(51)や俳優の木下ほうか(58)に続き、有名映画プロデューサーが女優たちに「性加害」を行っていたことが「週刊文春」の取材で分かった。
「ヒミズ」「蛇にピアス」などをプロデュース
その人物は、敏腕映画プロデューサーとして知られる梅川治男氏(61)。日本大学芸術学部映画学科在学中に自主映画制作を開始。卒業後は蜷川幸雄氏らが取締役を務める映像制作会社に入社し、1987年に「バタアシ金魚」で映画初プロデュースを果たす。1995年には映像企画会社「ステューディオ スリー」を創設。
梅川氏が携わった作品は、これまで国内外で高い評価を得てきた。
2008年公開の蜷川幸雄監督作「蛇にピアス」では主演の吉高由里子が日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、ブレイク。2009年、園子温監督作「愛のむきだし」は第59回ベルリン国際映画祭でカリガリ賞、国際批評家連盟賞を受賞。2011年、同じく園監督の「ヒミズ」では主演の染谷将太と二階堂ふみがベネチア国際映画祭で日本人初の最優秀新人俳優賞を獲得。梅川氏も同作で名プロデューサー・藤本真澄の名を冠した「藤本賞・特別賞」を受賞している。業界では、園監督の右腕的存在として知られているという。