なんと“あの”ホークス仏壇が売れた。

 九州を元気にするプロジェクト「ファイト!九州」の一環として、九州8県・計9種類の伝統工芸とのコラボ商品を製作して販売。そのうち地元・福岡県の伝統工芸品である「八女福島仏壇」とコラボした仏壇に、ホークス球団グッズ史上最高額の170万円の値が付けられたのだった。

 しかし、今年4月8日に発売がリリースされたものの反応は芳しくなかった。そんな情報を聞きつけて誕生したのが、5月7日付の文春野球コラム「『正直困っておりまして…』170万円の“ホークス仏壇”一つも売れず…担当者の本音」だった。幾ばくの読者に届くか分からないが、たとえ少数だとしてもホークス仏壇の存在を知ってもらうことが第一だろう。そんな思いから考え付いた企画だった。

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 まさか、それが大きくバズった。ヤフトピに取り上げられたのだ。1400を超えるコメントもつき、かなりのPV数があったと推測される。

 だが数日後、最初に情報をくれた球団広報担当者に会うと「ものすごい反響でしたが、買い手はまだ……」との返事。ヤフトピになって売れないのなら、もうお手上げかも。筆者もそんなことを言って互いに苦笑いを浮かべた。

「購入したいというお客様が現れました」

 それから日は流れ、ホークス仏壇のことはすっかり頭の隅に追いやっていた頃、「購入したいというお客様が現れました」と連絡が入った。

 6月8日、購入者がPayPayドーム8ゲート前「HAWKS STORE HOME」を訪れて会計などの手続きを済ませた。そんな“購入者第1号”がインタビュー取材に応じてくれるとのこと。さっそく、お話を伺った。

ホークス仏壇

 実名などは控えたいということでAさん(女性)としておく。この日はご主人と来店したが、購入を強く希望したのは母親だったという。

「昨年2月に父が亡くなりまして。父はホークスが大好きで、定年後は東京から故郷の福岡に戻って、ドームのすぐ近くに住んでホークスを熱心に応援していたんです。年間シートを買ってドームに通うほどでした。昔から応援していたから、長く活躍している選手を好んでいましたね。和田毅投手とか柳田悠岐選手とか。お葬式の時に作成した思い出アルバムもホークスのことが殆どでしたし、『いざゆけ若鷹軍団』の曲で送り出しましたから」

父親の葬儀の際に作成したアルバム

 そんな今年4月のある日、Aさんがホークス仏壇の存在を知った。Aさんもまた熱き鷹党であり、球団公式サイトやホークスオンラインストアは逐一チェックしていたからだ。その中にあった“破格”のホークス仏壇に目が留まった。

 本当に何気なく、母親に「こんな商品が出ているよ」と話をすると、母親は「見たい」とすぐに前向きだったそうだ。「正直、最初は『えっ!?』でしたよ」とAさんも笑ってその時を振り返った。

 もう90歳近くと高齢のため出歩くことも最近は少なくなっていたが、一度その目で実物を確かめたいとPayPayドームのショップに見に出かけた。

「実際に見て、やはり伝統工芸品で素晴らしかったですね。伝統的なものとホークスのグッズってどうなんだろうと最初は思っていましたが、ホークスのロゴマークも意外とマッチしていました。チームカラーが黄色なので金色になっても合っていますし、やはりロゴマークがなければホークスのグッズと分かりませんからね(笑)。母も『結構品がいいわね』と気に入ったみたいで、『お父さんが喜んでくれると思うわ』と購入を決めました」