埼玉西武ライオンズが本拠地とするベルーナドームは、球場内に雨や霧、雪などさまざまな自然現象を出現させることができる「全天候型ドーム」です(※人類の大半が滅びた未来世界で科学者がひとりで住んでそう)。「西武ドーム 雨 欠陥」「西武ドーム 霧 欠陥」「西武ドーム 雪 欠陥」などのワードで検索していただくと、さまざまな天候の画像や映像が見られることでしょう。
しかし、その映像は真実なのでしょうか。率直に言って僕には信じられませんでした。確かに、つけ渋った壁の隙間から多少の雨粒が座席まで入ってくることはあるでしょうが、雨が降るだの雪が降るだの、さも「上から下へと落ちてくる」みたいな言い方には疑問を持っていました。心ないインターネット民が話を盛っているのだろうと思ってきました。先日もYahoo!ニュースで「西武の白星を見る確率よりも球場内でカラスを見る確率のほうが高い」とか言う眉唾な記事を見かけました。インターネットなど鵜呑みにできるものではありません。
だが、しかし。迎えた2022年6月12日。僕は、ついに見たのです。ベルーナドームのなかに雨が降るのを。その雨は確かに上から下へと降っていました。インターネットの言った通りでした。ずっと都市伝説と言われていましたが、インターネットは嘘つきじゃなかった。雨が上から降ってきたとき、ドキドキしました。きっと、素敵なことが始まったんだって――。
ベルーナドームの雨、上から降るか? 横から降るか?
この日、ベルーナドームでは埼玉西武ライオンズVS広島東洋カープの試合が行なわれていました(※秋山翔吾さん争奪戦ではない/なので結果は西武が大勝)。しかし、試合開始から間もなくして天候が荒れ始めます。低気圧の中心にでも入ったのでしょうか。猛烈な雨と風、空には雷鳴が轟いています。球場内に風を送るための巨大扇風機(※涼を得るエコシステム)は、大型風車となって高速で回転し始めました。
やがて三塁側外野スタンドから生まれる、悲鳴にも似たざわめき。ベルーナドームの外野スタンド後方にある壁の隙間には、西日を防ぐかのように黒いスダレ(※涼を得るエコシステム)がつけられているのですが、巨大なスダレが紙切れのようにはためき、猛烈な風によってバタバタと暴れています。
そして、球場内には白く煙る雲のようなものが。その雲は壁の隙間から暴風が吹き込むたびに勢いを増し、球場内を上昇していきます。屋根につけられたLED照明のあたりまで昇った雲は、やがて勢いを失ったように落下していきます。それは紛れもなく雨でした。ベルーナドームのなかでは本当に上から雨が降っていたのです! ああ、ああ、雨がぁー! 雨がぁーー!
通風孔からの吹き込み説、雨漏り説は一蹴された。
あまり知られていないことですが、ベルーナドームの屋根には通風孔(※涼を得るエコシステム)があります。その場所は、先行して付けた銀色の屋根と、あとから付け足したお椀型の膜屋根との境目です。つけ渋った壁の隙間から外気を取り込み、塞ぎ渋った屋根の隙間からドーム内の空気を排出することにより、空調つけずのエコ球場を実現しています。
その通風孔から吹き込んだ雨が普通に上から落ちているのではないか、という吹き込み説を僕は長年疑っていたのですが、実際にこの目で見ますと、ドーム内に雨が降っているとき通風孔は素早く閉じられていました。その素早い対応のせいでドーム内の温かく湿った空気が屋根部分に滞留し、「外より蒸し暑い」を生み出している傾向は否めませんが、とにかく吹き込み説は一蹴されました。
そしてもうひとつ、「西武だし、普通に雨漏りしているのでは?」という疑いも長年抱いてきましたが、横から吹き込んだ雨が煙のように上に昇っていくのをこの目で目撃し、雨漏り説も一蹴されました。外野スタンド全体を覆うほどに広がった巨大な雨雲が雨漏りによるものだとしたら、もはやこれはドームですらなく引っくり返したザルみたいな話ですからね。9月にはあのレディー・ガガ様が来日公演をするというドームが、雨漏りし放題なんてこと許されませんからね。「ガガが来る」じゃなくて「ガタが来てる」になっちゃいますからね。まぁ、ガガ様は雨が降ろうが雪が降ろうが「今日は野外ステージなんだな」と思うだけかもしれませんが……。