アプリの充実と固定費の削減
まず、銀行の今後の対応策である一つ目、アプリの充実とセットでの固定費の削減について説明しよう。特に会社概要に示される国内店舗数と従業員数が代表的な計数だが、昨今のメガバンクでは、店舗や従業員数の削減が急である。
三井住友銀行で2019年から2020年にかけて、そして三菱UFJ銀行では2020年から2021年にかけて大量の店舗削減が行われた。なお、店舗の小規模化による固定費削減も行われている。具体的には、フルサービス機能の店舗は減らし、機能を相談のみに特定した軽量店舗にすることで店舗スペースの削減や担当行員の削減が行われている。
しかしながら、単に店舗を減らすだけでは、顧客との接点が減少し、ビジネスも先細りになる懸念が強い。そこで、銀行自らが顧客との接点を増やすための策が、アプリの充実である。各銀行ともアプリの充実には積極的に取り組んでいる。三菱UFJ銀行の新金融サービス提供プラットフォーム「Money Canvas」、ふくおかフィナンシャルグループの口座管理アプリ「Wallet+」、りそなホールディングスのアプリが顧客との接点を増やすための取り組みの典型例である。飛騨信用組合や君津信用組合の地域通貨の取り組みや、みんなの銀行、東京きらぼしフィナンシャルグループなどが手掛けるデジタルバンクの事例もその延長線上にある。
「Money Canvas」は、様々な投資運用サービスを三菱UFJ銀行のアプリ上からアクセスできるようにすることで、三菱UFJ銀行との接点を増やすことを一つの狙いとしている。
「Wallet+」も、銀行の入出金や残高照会以外の非金融サービスとして、情報コンテンツやポイントサービス、クーポン配信等を充実することで、顧客が日常的に利用することを狙っている。
銀行のアプリは、マネーフォワード、Zaim、マネーツリーが提供している自動家計簿に代表される個人財務管理サービス(PFM:Personal Financial Management)が、そのライバルとなる。この分野では、既存の銀行と、フィンテック企業が争っているといえるだろう。法人向けのデジタルサービスで他の金融機関の情報を集約できるサービスも、今後活性化してくる可能性がある。ここでは、マネーフォワードやfreeeのようなフィンテック企業が主導権を取りつつある。