安定性が大きな魅力で、長年就職人気の高かった「銀行員」という職業。しかし、昨今はFinTech、地域通貨、キャッシュレス、BaaSなど、各分野でのデジタル化が進み、業界は生き残りをかけた競争が激化しているという。はたして日本の銀行各社は今後どうなっていくのか。

 ここでは、メガバンクのシステム開発に携わってきた遠藤正之氏が、銀行ITの現状を分析した『金融DX、銀行は生き残れるのか』(光文社新書)の一部を抜粋・再構成。同氏が考える、銀行生き残りの具体的な方策について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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銀行業の特質

 さて、語弊を恐れずにいえば、金融業、特に銀行(含協同組織金融機関、以降同様)は他産業とやや異なる本質的性格を持っている。それは、安定的な経営基盤があってこそ成り立つ事業であるということである。経営上、ギリギリの状況から大ヒット商品が生まれて、起死回生の大逆転が起きるようなことを期待できる業種ではないし、そのようなことを指向する経営では問題がある。信用があることがビジネスの源泉であり、それがなくては成り立たないのである。

また、現状では赤字でないからといって、生き残れる業種であるともいえない。収益が減少傾向にあるだけで株価が下がり、PBR(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率)が1を大きく下回ってしまうのである。それが、銀行経営者にとっての危機感であるといえる。

 ここでは、今後銀行が生き残るために、すなわち持続的に安定した経営を行うためにどのような対応策が必要なのか、そして、特に金融DXをどのように活用すれば生き残っていけるのかを、五つの方策で本質的に示していく。

銀行が生き残るための対応策

 第一は、アプリの充実とセットでの固定費の削減である。第二は、融資系サービスによる収益拡大である。第三は、投資支援系サービスによる収益拡大である。第四は、個別のコンサルティング付きの金融サービス提供による収益拡大である。第五は、システム自体の販売による収益拡大である。銀行の金融DXの動きを見るとき、この五つの論点にあてはめてみると、その戦略の本質が理解できるのではないかと考える。