度重なるシステム障害で、2022年11月26日に金融庁からの業務改善命令、財務省からの措置命令を受けたみずほ銀行。しかし、そこからも三度システム障害が発生するなど、いまだ顧客の信頼を取り戻せているとは言い難い現状にある。
2021年には他の大手銀行やスマートフォン決済企業でも様々なシステム障害が発生していたものの、なぜ、みずほ銀行でのトラブルは頻発が目立ってしまったのか。ここでは、メガバンクでシステム開発などに携わってきた遠藤正之氏の著書『金融DX、銀行は生き残れるのか』(光文社新書)の一部を抜粋。専門家が見たトラブルの本質的要因を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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ATMの不稼働
2021年2月28日、みずほ銀行の全国の店舗のATM5900台のうち、7割強に相当する4318台のATMが不稼働となった。それ以上に問題だったのは、取り引きを受け付けているにもかかわらず、突然、取り引きが中断し、通帳やキャッシュカードがATMの中に取り込まれたままになる事態が発生したことである。
このような場合、備え付けの電話でATMセンターに連絡を取って対処することになっていた。しかし、当時ATMセンターのオペレータは8人程度しかいなかった。多くの店舗で同様の事態が一斉に発生したため、ほとんどの電話がATMセンターにつながらない状況となった。しかも2月28日は日曜日で、店舗自体も開いていなかった。顧客は止まってしまったATMが動き出し、カードや通帳が吐き出され、他の人の手に渡ってしまうのではないかと心配し、そこから離れることができなくなってしまった。
みずほ銀行にとっては、2002年の合併直後のシステム障害、2011年の東日本大震災後の義援金振込によるシステム障害に次ぐ、3回目の大トラブルとなった。実は、2011年のシステム障害を機に新たに構築した新システムMINORIがみずほ銀行で2年前にリリースされて以来、約2年間、大きなトラブルはなかった。したがって、この新システムは安定的に稼働していると思われていたのだが、MINORIに関してはこれが初めての大きなトラブルとなった。
このシステム障害の構図を示すのが上図である。この障害で顧客への影響が最も大きかったのは、ATMでの通帳・キャッシュカードの取り込み5244件だが、その発生には四段階の経緯があった。