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「選手は一生懸命やっとんのや!」私が阪神二軍監督・平田勝男さんに心奪われた瞬間

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/07/07

真昼間、ビール片手に見た二軍の試合で起きた運命の出会い

 クソボールやないか!

 真昼間にテレビから流れてきた、よく通る甲高い声。

「何事か?」と思わずテレビに釘付けになったあの日から、十数年が経とうとしている。

 声の主は、平田勝男さん。

 遡ること十数年前、昼間からビール片手に二軍の試合をテレビで見ていた時の事だ。

バッティングピッチャーを務めるも打たれて打ちひしがれる平田さん ©あまえび

 相手は中日ドラゴンズ。1対1で迎えた5回、ピッチャーが投じた球はワンバウンドに近いような球……見ているこちらもボールだ、と思った。

 しかし、球審はストライクのコール。

 その判定に相手のキャッチャーまでも思わず一瞬動きが止まるほどだった。

 するとすかさず、ハイトーンボイスにのせてテレビ越しに色々な言葉が飛び込んできた。

「クソボールやないか! あんなん」
「意地になって取っちゃダメだよ!」
「何を言ってるんですかじゃないやろ」
「なんや、その不貞腐れた態度は」
「テレビを見てみぃ」
「勘違いしたらあかんよ」

 そして発された言葉の中でも、とある一言が胸に刺さった。

「選手は一生懸命やっとんのや!」

 この一言に詰まった全ての感情に、時が止まったかのようにも思えた。

 野球選手という職業は明日がどうなるかもわからない、将来が確約されているわけでもない世界で、全力で戦っている超人たちの集まり。

 その中でも二軍の選手は、よりシビアな世界で戦っている。

 一球一球の判定が、明日を決めるモノになるかもしれない。

 だからこそ、一球への判定にここまで一生懸命になって下さる監督がそばに居るということは、きっと選手にとってもすごく嬉しいことだろうなと感激し、その瞬間から私は平田勝男さんのファンになった。

私の宝物、平田さんグッズの数々 ©あまえび

 それから今に至るまで、私は色々なところで“平田勝男さん好き”を公言している。ただ、年齢的にその現役時代は見たことがない。

 だから私は、その日から平田勝男という人について調べ始めた。

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