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引退試合で見せた送りバント。最後まで貫いた“脇役”の流儀

 出身校や現役時代のこと、好きな食べ物、もみあげのお手入れの間隔まで……。

 その中でも引退試合の話はとても興味深かった。

 平田さんの現役時代の代名詞は送りバント。

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 阪神タイガースが優勝した1985年には1試合4犠打という日本記録も樹立している。そんな平田さんの引退試合の日、満員の甲子園球場には御家族の姿もあった。

 平田さんは試合前の会見で、息子が公園で野球をする時に自分の真似をしてバントの構えばかりをしていることを気にかけている。

 だから今日くらいは思い切ってお父さんも打つんだというところを見せたい、と。

 試合は1点リードを許し進む中、阪神はノーアウト二塁という同点のチャンスを迎える。

 バッターボックスには現役最後となる平田勝男さんの姿。

 ベンチは勿論ノーサイン。つまり、「打て」の合図。

 お父さんも打つんだというところを見せたい――。御家族も見守る最後の試合で、打席に立った平田さんは自らの意思でバントをし、ランナーを進めた。

 自分のヒットよりもチームの勝利を選び、最後の最後まで脇役に徹した平田勝男さん。

 知れば知るほど魅力的で愛情が詰まったあたたかい方。

 厳しさを大事にしながらも時にワケの分からないオヤジギャグを添えて笑いも取り、皆から愛されている存在。

 今の時代には減ってしまった貴重な人だとも感じている。

 勿論いつか一軍で指揮を……とも思うが、平田さんは若トラ達が成長、活躍する為にきちんと育成をできる方という認識があるので、このまま二軍で指揮を執り続けて欲しい気持ちもある。

 そんな想いを馳せながら、今日もビール片手にファームで行われている試合を観ようと思う。

 もし宜しければ、貴方も一緒に平田勝男沼へ……いらっしゃいませんか?

バッティングピッチャーを務め、腰を痛めたとアピールするお茶目な平田さん ©あまえび

 

 

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