先日、ベイスターズの今永投手がノーヒットノーランを達成した。そんな彼が心の内で何を思っていたのか、ノーヒットノーラン後の彼の心境がどういったものなのかを聞かせていただいた。私はこの偉業が気になって仕方なかった。というのも、私は彼がリーダーを務める『ヴォル会』という5名程度のLINEグループに所属しているのだが、そこでは日本語として成立しているのかどうか怪しい会話しかなされていない。そんな彼があんなに真面目なインタビューの受け答えをしているのだから、気にならずにはいられなかった。私目線で聞いた彼の話を少しでも皆さんに知ってもらえればと思う。

ノーヒットノーランを達成した今永昇太

「どういう表情をしていいのかわからなくなっていました」

『DeNA今永、ノーヒットノーラン達成』。ベイスターズのスクール業務を終え、スマホを見ている私のもとに、そんなニュースが流れてきた。2022年6月7日、ベイスターズに新たな歴史が刻まれた。札幌ドームで行われたファイターズ戦で、今永投手がノーヒットノーランを達成したのだ。私が彼とチームメイトだった期間はたった2年しかなかったが、その偉業を達成するには十分すぎるくらいの能力があると感じていた。実際、ブルペンで隣あって投げたことがあったが、私はその時根こそぎ自信を削ぎ取られたことを鮮明に覚えている。そんな彼の偉業達成を知り、すごいなぁとか、さすがだなぁとか、そんな事を思いながら家路についた。ただこれだけで終わらないのが今永投手の良さである。私はテレビのニュースを見て改めて衝撃を受けた。彼の表情、どうしたんだ、またふざけてるのか? どこまでエンターテイナーなんだ? 気になって仕方なかったので、日にちをあけて今永投手に直接聞いてみることにした。彼は快く引き受けてくれた。彼の優しさに甘えて、聞きたいことを聞かせてもらった。

寺田「まずはノーヒットノーラン達成おめでとう。そしてやはり気になるのが表情なんだけど、記事で書かれてたのは、相手チームの本拠地なので喜びすぎないようにした、という内容だったけど、本当にそれだけなの?」

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今永「半分本当で、半分冗談です」

寺田「どういう意味だ?」

今永「もちろん半分は、相手チームの本拠地なので喜びを出しすぎないようにはしました。ただ、もう半分は、どういう表情をしていいのかわからなくなっていました。もしあの時、最後の打者を三振で打ち取っていたら、多分反射的に笑顔になって喜びを出せてたと思うんですけど、実際にはライトフライだったので。フライが上がって捕球までの時間があるじゃないですか? その時間に色々考えちゃって。どういう表情にしたらいいんだろうって考えているうちに、ベンチからみんな来てくれて、でも僕の中でまだ表情は決まってなくて。そのうちになんかもう真顔のままで過ごすしかなくなっちゃいました。表情イップスです」

寺田「なるほどな、てっきりまたふざけてるのかと思ったよ」

今永「ちなみにいつもふざけてませんよ! 寺田さんは普段のおちゃらけてる僕を知ってるからそう思うんですよ! まあでもそれもひとつあって、僕のキャラっていうか、あるじゃないですか。ちょっと敢えてやってるみたいな。それもあってあんな感じになりました。引き際もわかんなくなっちゃってましたし」

寺田「なるほどね。一番気になってたところが聞けてよかったよありがとう。もう少し聞いてもいいかな?」

今永「もちろんいいですよ」