野村勇の体のどこから、そのような力が湧き出てくるのだろうか
プロ1号本塁打は4月21日、京セラドームでのオリックス戦で記録した。出身は兵庫県。プロに入って初めての地元関西の遠征で嬉しい一発を放った。その3日後の同24日、今度も大仕事をやってのけた。札幌ドームでの北海道日本ハムファイターズ戦で3回に先制の2号2ラン、6回はダメ押しの3号ソロを左翼席に打ち込んだのだ。日本でも屈指の広さを誇る札幌ドームでの1試合2発は、真の長打力を兼ね備える打者でなければ成しえない離れ業だ。球団新人では小久保以来、28年ぶりの1試合2発でもあった。
この日のヒーローインタビューでは「パワー、ありました」とルーキーらしく初々しい笑顔で応えた。野村勇の体のどこから、そのような力が湧き出てくるのだろうか。
俊足自慢でいかにもアスリート然としているが、好きな食べ物は意外にも「ラーメン二郎」だ。拓殖大学時代にめじろ台店に通い詰めていたという。「そこの店舗には汁なしラーメンがあって、ニンニクアブラマシマシで食べていました」。入団発表時には、飼っている文鳥の散歩という珍しい趣味を披露し「ちゅんちゅん」と名付けていることも明かすといったエピソードが話題になったが、いやいやじつは豪傑な男ではないか。
それはともかく、野村勇に打撃のこだわりを問うと、力強くこんな言葉を返してきた。
「当てに行ったら良さがなくなる。強く振れるところが自分の強みでもある。コーチの方々からも『当てにいかなくていい』『強く、持ち味を生かせ』と言われています」
バットは目一杯長く持ち、力の限りのフルスイングでとらえに行く。一方でその代償として123打席で37三振(7月28日現在)を喫している。全打席の30%を占めており、柳田悠岐の22.7%や現在パ・リーグ本塁打王の山川穂高(西武)の22.4%と比べるとかなり高い数値だということが分かる。野村勇本人も「三振は一番ダメ」と分かっているが、今はフルスイングを全うするつもりだ。まだ1年目。短所を補うために長所を消す選択はするべきではない。
7月29日から始まる球宴明けの後半戦。そして、今後続いていくプロ野球人生を、野村勇はどのように羽ばたいていくのだろうか。井口二世か小久保二世か、いや、唯一無二の野村勇という名前で勝負できるプレイヤーへとのし上がっていくはずだ。
支配下で最も大きな背番号99をつけるルーキーへのコールは、「夢、期待マシマシ」である。
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