「家族からの手紙」に語らせるインスタテク
そんなタキマキさんでございますが、常に口にするのは「私は普通の主婦」「みなさんの等身大のモデル」……。夫のブランドの海外出店に同行しついでに家族旅行しちゃう(滝沢眞規子スタイルブック『MY BASIC』より)普通の主婦、たぶんあまりいない。「普通」「等身大」とは、そうでなくても批判を買うことが多いママ領域で稼ぐ人たちが世間からの反感を逃れるために使う隠れ蓑なのでしょうが、タキマキさんの凄さはその隠れ蓑が全く隠れ蓑になっていないところなのです。今回はそれをタキマキさんのインスタグラムから検証してみたく思います。
タキマキさんのインスタの特徴は、その情報量にあります。一枚の写真にこれでもかというほど情報を詰めてくる。その情報とは系統として「金持ちっぷり」「庶民っぽさ」「ちゃんと家事育児やってる感」「夫ラブ」などなど。「金持ちっぷり」と真逆の「庶民っぽさ」が相見えるのですから、まさにケンカ四つです。自慢したい、でも出過ぎた女と嫌われたくない……そこで策士タキマキが多用するのが『カナダからの手紙』ならぬ“家族からの手紙”。そう「言えぬなら、家族に言わせるホトトギス」大作戦です。たとえば『VERY』の表紙モデルが決まったときの長女からの置き手紙。
「ママへ。いつもありがとう! 表紙おめでとう! これからもがんばってね! あとお弁当これからもよろしく! ママ大好き♡♡(あと、お小づかいおねがいします)」
この手紙を「お手紙と思いきやちゃっかりお小遣いを催促されました」「#なかなかやるじゃないの」「#しかたない100円上乗せしてあげよう」というコメントとともにアップするタキマキさん。
これ、ただの「子どもからの何気ないお手紙」じゃないんですわ。まず手紙のやり取りという密なコミュニケーションが家族内でなされているという前提の上に、家族から自分の仕事は応援されている、愛されているお母さんである……というフレームを構築。ここまでならまぁよくあるでしょう。
タキマキはさらに「あとお弁当これからもよろしく」の「これからも」に「忙しくても家族の弁当を作り続けている私」を乗せ、「お小づかいおねがいします」「#しかたない100円上乗せしてあげよう」のやり取りに「カネは持っているが子どもには正しい金銭感覚を養うべく躾している」を漂わせる。言葉にせずともこの一枚の手紙でタキマキの「豊かさ」は証明されるのです。また「歳を重ねる度にもっと輝いていくマキちゃんは素敵」「13年一緒に居てくれてありがとう」など夫からのバースデ―/結婚記念日メッセージを「#インスタに載せたら嫌がるけれど」と毎回同じ言い訳をカマしながらアップするタキマキ。結局毎年載せとるやないか~い。
それでも「普通の主婦」目線
本当に、飲み屋でやることなくなったらぜひ覗いていただきたい、タキマキさんのインスタグラム。とにかく隙あらばクッキー(グルテンフリー&バター不使用)を焼くそのステラおばさんスタイル、普段オーガニックの鳥の餌みたいなやつしか食べていないのに、突然夜食に炒めたにんにくをぶっかけた明太子を出してくる隠し切れない葛飾出身感、普段オーガニックのデトックスウォーターみたいなやつしか飲んでいないのに、唐突に自身が『VERY』で広告モデルを務めるサントリーの天然水を出してくる資本主義臭……。
私も一介の子持ち主婦として、思うのです。栄養バランスと彩りに気を使ったお弁当をこしらえて、子ども達の勉強を見て、ママ友呼んでパーティーして、ブランドのパーティー行って、モデルやってヨガやって、ヘッドスパやって、それ全部インスタにアップして……一日5000kcalくらい消費しそうなタキマキライフ、これがスタンダードだったら、主婦全員戸塚ヨットスクールに行かねばなりません。タキマキさんお願いです。どうかカネに物を言わせて家事は外注してくれませんか!? 我々に言い訳する隙を与えてはくれませんか!?「私は普通の主婦で等身大のモデルです」という精神的ハッシュタグに「普通の主婦」のK点を余裕で超えるような、たとえば「自宅の暖炉で焼き芋作りました~」みたいな写真をつけて世間に提供するタキマキさん。ママたちのコンプレックスをこちらが攻撃しづらい形で刺激しつづけるタキマキさんこそ、現代的自意識モンスターなのかもしれないな……と思う今日この頃です。