『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイをはじめ、『名探偵コナン』の灰原哀や『スレイヤーズ』のリナ=インバースなど、数々の人気キャラクターを演じてきた林原めぐみさん。ほかにも『らんま1/2』女らんまや『ポケットモンスター』シリーズのムサシなどを演じ、世代を超えて愛されている声優の一人だ。

 そんな林原さんは、自身の演じたキャラクターとどのように向き合ってきたのか。ここでは、林原さんの著書『林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力』より一部を抜粋して、『名探偵コナン』灰原哀が持つ“役目”について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む

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コナンくんにこき使われる幸せの意味

『名探偵コナン』という作品が放送されていることは知っている…程度の認識だった頃です。途中参加で番組に加わり、コナンの秘密を握っているという「ミステリアスな少女」を演じることになりました。

 初登場は衝撃的でしたね。ランドセルを背負って、かわいらしく、質素に登場する転校生。ところが拳銃は撃つわ、泣きまねはするわ、江戸川(えどがわ)コナンである工藤新一に揺さぶりかけるわ…。どっからどう見ても悪役的要素満載な彼女。

 一方スタジオでは、コナン役の高山みなみ嬢に頼り切り。わからないことや、今までの経緯など、あれこれレクチャーを受けながら、アフレコは順調に進んでいきました。参加当初は哀ちゃんの出ている回に毛利(もうり)蘭(らん)ちゃんや、(毛利)小五郎さんが一緒に出てくることはなく、灰原哀として、コナンや少年探偵団のみんなと過ごす週がしばらく続きました。

灰原哀 『名探偵コナン』アニメ公式サイトより

 そんなある日、スタジオ入りしたところ、先週まで私が座っていた席に、蘭ちゃん役の山崎和佳奈ちゃんが座っており、仲睦むつまじく、みなみちゃんとお話ししている! 個人的には仲の良い、和佳奈ちゃんではありますが…なんでしょうかねえ、あの時の敗北感。ああ、そこはもともと私の席じゃないんだ…。そうじゃなかったんだ、もう何年も前から…。

 自分が途中参加であることを今さらながらに痛感し、遠く離れた、しかも二人がよく見える席を陣取り無言で座る…(大人げない)。

 とはいえ、哀ちゃんは、(阿笠)博士と一緒に登場することが多く、スタジオ入りした博士役の緒方賢一さんが「哀くんの席を取っておいたよ」と、ご自分の荷物を椅子に置き、私の席を確保しておいてくれたり、「灰原さん、灰原さん」と、何かと哀ちゃんを真正面から好いてくれる(円谷 )光彦役の大谷育江ちゃんも、私の隣に座るようになり、右手に博士、左手に光彦くんというなんともあったかい座席が定位置となって、今も続いています。