『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジをはじめ、『美少女戦士セーラームーン』のセーラーウラヌスや『カードキャプターさくら』月城雪兎など、数々の人気キャラクターを演じてきた声優・緒方恵美さん。2021年12月公開の『劇場版 呪術廻戦0』でも、主人公の乙骨優太役を演じて話題になりました。
ここでは、緒方さん初の自伝本『再生(仮)』より一部を抜粋。デビュー作『幽☆遊☆白書』ファンの熱狂に触れたエピソードを紹介します。(全2回の1回目/後編を読む)
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震えながら上がった初イベントツアーは……
92年10月に放送がスタートした『幽☆遊☆白書』ですが、しばらく経って、初めてのイベントがありました。初イベントというだけでも緊張するのですが、何より『幽☆遊☆白書』のお客さんに会うのがとてもこわかった。というのも、たくさんの先輩方に言われていたから。「心の準備をしておけ」と。
新人で人気キャラクターを演じていると、お客さんから攻撃されることが多いのだと。ある男性の先輩は、人気ヒロインの相手役を演じたために、イベントで生卵をぶつけられたそう。また他の先輩は、剃刀入りの手紙をたくさんもらったとか。えええ! 震えました。
当時はネットの口コミもなかった頃ですから、お客さんがキャストをどう思っているかは会ってみなければ、イベントのフタを開けてみなければわからない。
しかも私が知っている情報は、放送前のキャスト発表の時に、蔵馬を演じるのが新人の女性だということで、テレビ局や出版社に抗議の電話や手紙が届いていた、ということだけ。私の所属事務所情報も何も出ていなかったので、実際の抗議の声は、私自身にはまったく届いていなかったのです。
ただ、とにかくなんとか頑張って乗り切らなければならない。役を演じることは好きでしたが、自分のことを語るのが得意ではない私。まず何を話せばいいかわからない。でもせめて、初めて披露するキャラクターソングだけはきちんとやりたい。それで、キャラクターソングに振りをつけてみようと思い立ちました。