昨年6月、さいたま市大宮区のインターネットカフェで起こった立てこもり事件。今日6日、裁判員裁判初公判がさいたま地裁で開かれた。女性店員を人質に立てこもったとして、逮捕監禁致傷などの罪に問われた無職・林一貴被告(41)は「監禁したという部分は合っているが、他は間違い」と一部を否認している。
学生時代は「話しかけてもボソボソ話すタイプ」だったという林被告。事件に至るまで、彼になにがあったのか。「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2021年7月1日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
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「室内の物が壊れているので、見てほしい」
40代の坊主頭の男は、20代の女性従業員にそう声をかけ、個室ブースへと招き入れた。しかし、室内に壊れたものなどはない。訝しげに女性がその場を離れようと背中を向けた瞬間、男は首を後ろからつかんで引き倒し、カッターナイフを取り出した。
「もう寝る」と言った2時間後に捜査員が突入
現場は大宮駅にほど近い雑居ビルのインターネットカフェ。6月17日午後4時10分頃、「従業員が客に呼ばれてブースに入ったが、その後応答がない」という通報から事件が発覚した。約32時間にわたる立てこもりの末、6月18日、埼玉県警は監禁の容疑で住所不定、無職の林一貴(かずたか)容疑者(40)を現行犯逮捕した。
立てこもり中、林は警察に対して「もう出るから、待て」と時間を稼ぐ一方、「お前らが入ってきたら、人質を傷つける。殺す」などと牽制を続けた。だが、18日午後8時頃、「もう寝る」と言って呼びかけに応じなくなったため、約2時間後に捜査員が突入。寝ていた林の身柄を確保した。
「従業員は首や肘にケガを負っていたため、容疑を逮捕監禁致傷に切り替えて送検している」(警察関係者)
林は栃木県の日光市出身。幼い頃に両親は離婚し、母の手一つで育てられた。
「目立つほうではなかったが、ぽっちゃりしていて、少しやんちゃだった印象がある。フィールドホッケー部でキーパーをしていて、当時流行っていた前髪を長く伸ばす、ヤンキーみたいなロン毛でしたね」(小中学校の同級生)