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岡本、中道、佐藤宏…好素材が多い育成左腕

 たとえば、キャンプ時に藤井と競い合って共に注目を集めたのが同じ右腕の重田倫明(4年目/国士舘大)だった。今季も「背番号138」からの卒業はならなかったが、ここまでウエスタン・リーグではチーム最多の35試合に登板して4勝3敗4セーブ、防御率2.66と好成績を収めている。リリーフ登板が基本線だが、8月3日のオリックス戦(タマスタ筑後)では先発して5回2失点と幅のある起用に応えたことで、評価はさらに高くなるだろう。ただ、重田にとって不運だったのは、藤井も田上も中村亮も同じ右ピッチャーだったこと。今年に関してはライバルたちが強力過ぎた。

 重田と同学年の岡本直也(4年目/東農大北海道オホーツク)も19試合4勝0敗、防御率1.08と文句なしの成績。昨年までの3年間は故障で公式戦登板がなかったが、今季ようやく実力を発揮した。彼の場合は左腕だ。チーム全体としても左腕の台頭は待たれているが、これほどの成績を残しても支配下登録が叶わなかった。

 この岡本をはじめ、育成左腕には好素材が多い。変則的なフォームから140キロ台後半を投げ込む中道佑哉(2年目/八戸学院大)やドラフト直前にトミー・ジョン手術を受ける異例のプロ入りもかつて上位候補と評判だった佐藤宏樹(2年目/慶應義塾大)、ルーキー左腕でも三浦瑞樹(1年目/東北福祉大)は「杉内2世」のオーラを身にまとい、F1レーサーと同姓同名の佐藤琢磨(1年目/新潟医療福祉大)も春先は見どころある投球を見せていた。

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佐藤宏樹 ©田尻耕太郎

特徴のある選手が多い育成ルーキー野手陣

 考えてみると、14名も入団してきた育成ルーキーたちは左腕に限らず、特徴のある選手が多い。育成1位の藤野恵音(戸畑高)は右打ち大型内野手で、球団関係者も「育成でよく獲れた。将来有望」と口にする。同2位の川村友斗(仙台大)と同9位の山本恵大(明星大)は左打ちの大型外野手でパンチ力が光る。

 同12位の三代祥貴(大分商高)もパワー自慢で育成下位の高卒新人ながら三軍では4番を任されることもあった。指名順位では最下位、12球団全体でも最後の128番目指名だった同14位の仲田慶介(福岡大)は最近では珍しい泥臭さを厭わないガッツマン。小久保裕紀二軍監督からの評価も高く、二軍での出場を増やしている。

仲田慶介 ©田尻耕太郎

 ホークスはどういうわけか、ドラフト上位よりも育成出身がすくすく育つ土壌がここ最近は出来上がっている。上記の中から来年の今頃には一軍で中心選手となっている選手が現れていても、全く不思議ではない。過去にそんな例はいくらでもあった。

 自分はあの時から目をつけていた――とちょっと胸を張ってみたいファンの方、今年のタマスタの夏は例年以上にアツいですよ。

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