状況が動いたのは2021年9月に準奈さんの父親が投稿したSNSがきっかけだった。世論の高まりに押される形で方針転換した市教委は、準奈さんの事件をいじめ防止対策推進法における「重大事態」と認定し、新たに第三者委員会を設立。あらためて調査が開始された。
2022年4月16日に酒田市の教育委員会は記者会見を開き、最終報告書を発表する。「文春オンライン」取材班が入手した最終報告書の中身は以下の通り。
まずイジメ行為の存在については、いじめ防止対策推進法の定義を参照したうえで「LINEへの書き込み」「げた箱への紙の投入」など6項目を検討し、5項目について「いじめに該当する」とイジメの存在を初めて認定した。
しかし、準奈さんのげた箱に「死ね」などと書かれた紙を投入して追い詰めた人物や、悪口を発言した人物は「特定出来なかった」と報告されている。
さらにイジメと自殺の因果関係についても「(準奈さんが苦しみを表明した)令和2年7月の時点でかなり強い希死念慮(編集部注:自殺願望のこと)を抱いていたが、それ以前に本生徒に対するいじめがあったとは認められない」と報告。調査によって判明したイジメの事実が令和2年7月以降であったことを理由に、「いじめと自死との間に一定程度の因果関係は認められると考える」としながらも「いじめが自死の主要な要因であるとまでは考えない」という結論を下した。
「私たちは質問することもできませんでした」
準奈さんの両親は、記者会見の3時間前に市内の公共施設の会議室に呼ばれ、酒田市教育委員会の鈴木和仁委員長から、調査結果の概要を事前に伝えられた。その席で委員長は、「学校の管理下でこのようなことが起きてしまい、まことに申し訳ありませんでした。また、学校と市教委がご遺族に不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」と、深々と頭を下げて謝罪したという。調査の当事者である第三者委員会のメンバーは、遺族への報告の場には立ち会わなかった。
準奈さんの死から1年以上にわたる調査の最終調査結果について、母親は目に涙をためてこう語る。
「報告を聞いても悲しみしかありませんでした。この報告書を作った組織の第三者委員会は報告の場に誰1人出席せず、私たちは質問することもできませんでした。特に加害生徒たちのことが何も書かれておらず、本人に聞き取りをしたのかどうかもわからない。納得できません……。娘を返してほしい。ただ、それだけです」
公式な調査は今回の報告書をもって終了となるが、さらなる真相究明が待たれる。