走る! 走る! 走る! スクリーンから砂埃がバサーッと吹き出てくるんじゃないかと思うほどの迫力と躍動。映画『キングダム2 遥かなる大地へ』が絶好調だ。2019年に公開された前作『キングダム』の動員数を大きく上回る勢いで、2週連続トップの好スタートダッシュを切った。映画興行成績は、すでに興行収入30億円、累計観客動員数210万人を突破(8月5日現在)。そして私もしっかりその動員数の中に入っている。

映画『キングダム2』(huluより)

 1作目を観て、そのスケールの大きさ、吉沢亮の時代を動かすオーラ(ルックスだけでなく、声とセリフ回しが素晴らしい!)、山﨑賢人のエネルギーが爆発するような圧倒的ヒーロー感に感動したというのもある。しかしなによりもう一つ、映画館に足を運んだ大きな理由、それは「岡山天音が出る」!

 今「この人が出ると面白くなる」という注目の俳優で、矢本悠馬とともに真っ先に名前が出る人だろう。私も2014年のドラマ「家族狩り」あたりから、その個性的な存在感は認知していた。そして4年前くらいからそれどころではなくなってきた。

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 2018年の映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』で、コツコツとやるべき仕事をしていく吉村役を観て「こんなにカワイイ人だったとは」と好感度が急上昇。2022年春クールのドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」の“かっつん”役がトドメの稲妻となり、完全に落ちた。ドラマ自体はトレンディドラマっぽい構成に現代社会の課題を盛り込み、どんな気持ちで観ればいいのか迷うような展開だったが、いいのだ。真山アリサ役の飯豊まりえと岡山天音の魅力を存分に引き出した功績は大きい。物語をとぅるんと動かす不思議なキーマン、天音をもっと観たい!

岡山天音 ©時事通信社

 さあいざ映画館へ。するとそこには「ちょっと休ませてあげてーッ!!」と言いたくなるくらい、ヒイコラと駆けずり回る彼がいた。

ボロボロの槍を振り回して泣く姿に…

 紀元前の春秋戦国時代を描く『キングダム』。2作目となる今回は「普通の邦画7本分」の製作費をかけた演出、山﨑賢人や清野菜名らによる超人的な殺陣に圧倒される。そんな「遠い世界の非現実な展開」のなかで、岡山天音演じる尾平は、私たち観る側と一番近く、共感をくれる。岡山自身が「週刊ヤングジャンプ」(集英社)のインタビューで「蛇甘平原の戦場で、尾平は読者と『キングダム』をつなぐ『視点』となっている」と語っているが、まさに映画でも彼はキングダムの世界と現実の世界をつなぐ存在。ユーモラスでお調子者という設定に、岡山の持ち味である少しアンニュイな部分がリアルさを出し、歩兵の苦しさが丸ごと伝わってくるのである。

 どう考えても負ける。そんな予感に怯えて吐き、ボロボロの槍を振り回して泣く彼の姿に、戦乱の恐怖感が身に迫りゾッとするのだ。