「今の日本のドラマは医者と刑事ものばっかりだって、いつも嘆いていたでしょーが」

 これは、ドラマ『共演NG』に出てくる芸能事務所社長・マーク野本(リリー・フランキー)のセリフである。テレビ東京にて月曜22時から放送されている『共演NG』は、かつて恋人同士だった実力派俳優と人気女優が、25年の“共演NG” を経て再共演を果たす、大人のラブストーリーだ。

 主役の中井貴一&鈴木京香をはじめとした豪華な顔ぶれ、華やかな芸能界の裏側を描くストーリー、そして何処となく漂うトレンディな香りに、「テレ東のドラマなのにフジテレビっぽい」という感想があふれていた。

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公式HPより

 しかし、今のフジテレビに“フジテレビっぽいドラマ”は多くない。そもそも「フジテレビっぽいドラマとは何か」から考えなければならないが、まずは『東京ラブストーリー』や『ロングバケーション』『やまとなでしこ』等の“時代を映したラブストーリー”が思いつくのではないだろうか。はたまた『踊る大捜査線』や『コード・ブルー』のように、人気俳優陣がド派手に活躍する作品か。

 フジテレビの黄金期をリアルタイムでしっかりと見ていない世代の私も、“フジテレビっぽいドラマ”と聞いて連想するのは、何となくそこらへんだ。

事件解決系のドラマばかりになった月9

 だが、今のフジテレビでは「明るく華やか」で、裏を返せば「俗っぽい」とも受け取れるドラマではなく、全世代が無難に見られる一話完結型のドラマが主流になっている。

 かつて「月曜の夜はOLが町から姿を消した」と言わしめた月9は、2018年4月クールの『コンフィデンスマンJP』以降、医療ドラマか刑事などが主役の事件解決系のドラマばかりになった。コロナ禍でスケジュール進行が上手く行かない側面もあったのだろうが、木曜22時枠のドラマは2クール連続で医療ドラマになり、関西テレビが制作している火曜21時枠は、現在放送中の『姉ちゃんの恋人』をのぞく4作品が、不穏な空気が流れるミステリーやサスペンスだった。

 冒頭に書いたマーク野本のセリフは、今のテレビドラマ界を、ひいては大きく路線を変えたフジテレビへの皮肉のようにも思えたのである。