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安倍晋三氏との30年 北村滋・前国家安全保障局長が綴った追悼手記

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 憲政史上最長となる8年8カ月におよぶ安倍晋三政権を、首相秘書官、内閣情報官、そして国家安全保障局長として支えた北村滋氏(65)。北村氏は、8月10日発売の「文藝春秋」9月号にて15ページにわたる追悼手記を執筆している。

北村滋氏(前国家安全保障局長)

 7月8日、事件発生の一報を耳にした北村氏はすぐさま安倍氏の搬送先である奈良県立医科大学附属病院(奈良県橿原市)へと向かう。手記では次のように記されている。

〈13時17分発の「のぞみ35号」に乗り込むと、気持ちが少し落ち着いた。「この『のぞみ』が安倍総理の強力な磁場に引き寄せられている」。そんな錯覚のなせる業だった。「ひょっとしたら総理と言葉を交わすことができるかもしれない」などと淡い期待を抱いたこともあったが、そんな期待は現地到着後に裏切られることになる〉

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事件当日の様子 ©共同通信社

 新大阪駅からの道中には、安倍氏の総理秘書官だった今井尚哉内閣官房参与から北村氏のもとに連絡が入った。

〈橿原市に向かっていると告げると、昭恵夫人と菅義偉前総理もまた此方に向かっていることを教えてくれた。彼は、これから生ずるであろう本件に関する安倍事務所としての仕事を中核となって引き受ける覚悟でいた。奈良の病院における事務は、私に委せたということなのであろう。官邸で勤務していたときから、何時もそうだった。長く話し合わなくとも事態に応じて2人が安倍総理のためにそれぞれ何をすべきかは自ずと分かっていた〉

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