文春オンライン
安倍元首相、異例の「国葬」へ…「民主主義を守り抜く」岸田首相の“決断”に足りないものとは〈吉田茂以来55年ぶり〉

安倍元首相、異例の「国葬」へ…「民主主義を守り抜く」岸田首相の“決断”に足りないものとは〈吉田茂以来55年ぶり〉

2022/07/19
note

 今回、最初に紹介したい記事はこちらです。

『安倍氏「国葬」待望論』(産経新聞7月13日)

 先週水曜、産経新聞が一面トップで大きく書いた。銃撃されて亡くなった安倍晋三元首相の国葬を「待望」とあるので主張がアツい内容かと思いきや、読んでみると印象が違った。

ADVERTISEMENT

 小見出しには「法整備や国費投入課題」とある。記事の序盤では《元首相の葬儀に国費を投じることには批判的な意見も根強い。》と早々に書いている。

安倍晋三元首相 ©文藝春秋

 さらに《過去の例に照らせば、国葬となる可能性は高くない。法的根拠となる国葬令は昭和22年に失効している。》とも。

 そして《最近では内閣と自民による「合同葬」が主流で、安倍氏もこの形式となる可能性が有力視される。》という一文すら。

戦後の首相経験者の「追悼」

 つまりこの記事の味わい方としては、自民党内や保守層から「国葬」を求める声が上がっているけど「うーん、でも難しいのかなぁ……」という産経師匠の思いを感じたのです。だから期待を込めて待望論と大きく書いたように読める。

 この記事では「戦後の主な首相経験者の追悼」をまとめていた。わかりやすいので引用します。

「国葬」 吉田茂氏(昭和42年) 
特徴 国の儀式として全額国費で実施。国葬の根拠となる国葬令は戦後廃止されていたが、生前の功績を鑑みた

「国民葬」 佐藤栄作氏(昭和50年)
特徴 内閣と自民党、国民有志が共同で実施。費用はそれぞれが支出した

「合同葬」 大平正芳氏(昭和55年)、岸信介氏(昭和62年)、中曽根康弘氏(令和2年)ら
特徴 内閣と自民党が実施。経費の一部を国費から支出する。現職首相のまま死去した大平氏以来の慣例

 こうしてみると昭和55年(1980年)以降は合同葬という流れがよくわかる。吉田茂氏の国葬もかなり異例であったことがわかる。