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 産経は最後に《国際社会で日本の存在感を高めた功労者の葬儀をどう執り行うのか、政府の対応を国民や国際社会が注視している。》と締めています。

 これを読んで、どんな形式になるにせよ、これから様々な議論が出て、検討されていくと予想したのです。

 すると2日後。

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『安倍元首相の「国葬」 ことし秋に行う方針 岸田首相が表明』(NHK NEWS WEB7月15日)

 岸田首相にしてはとてつもなく早い決断。さらに気になったのは「民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく」という岸田首相の言葉でした。

「民主主義への挑戦」という紋切型フレーズの危うさ

 ふりかえってみると今回は「民主主義」を含んだ表現があちこちで使われた。たとえば銃撃事件直後に「民主主義の危機」「民主主義への挑戦」という言葉が新聞の社説などで多く言われた。

 それに対し、容疑者はどうやら政治テロではなく個人的な恨みで犯行に及んだらしいので、民主主義の危機とは違うのでは? という声も出た。これは新聞による「これさえ言っとけばいいだろ」という紋切型フレーズ、「何か言ってるようで言ってない」という伝統的な所作に対する批判の意味も含まれていたと思う。ちなみに私はいろんな人や意見を見聞きできる街頭演説はフェスだと考えるので、容疑者があの場を狙ったことや、私たちからフェスの楽しみを奪ったことは民主主義の破壊だと感じました。

中曽根康弘元首相(左) 2019年に逝去。内閣・自民党による合同葬が行われた ©文藝春秋

 民主主義に対するいろんな論議がありましたが、むしろヤバいのはこれからではないでしょうか。

 民主主義に必要な態度の一つは、意見が割れ、賛否がある議題ほど丁寧に多角的に議論を重ねていくこと。しかし岸田首相は国葬論議でそのようなプロセスをすっ飛ばした。「民主主義を断固として守り抜く」との言葉と相反する。国葬をいち早く表明することで保守コア層に見放されないよう自分を「守り抜いた」だけでは?

国葬の場合は「2億円以上はかかるとみられる」

 産経も指摘したように議論があるのは税金投入の件が大きいからです。最近の中曽根氏の合同葬では政府は約9600万円を支出。これをもとにすると国葬の場合「2億円以上はかかるとみられる」(東京新聞7月16日)との試算もある。やはりまだ様々な議論が必要な気がする。しかしタブロイド紙によっては国葬に慎重な官邸内の意見を「抵抗勢力」と見出しに書いていた(夕刊フジ7月15日付)。もっと冷静になったほうが……。