ジャニーズの御法度を裏返した「新しい地図」
スキマ 今年のバラエティでもう一つ大きな出来事といえばAbemaTVの『72時間ホンネテレビ』です。ネット配信番組、出演画像をSNSで拡散させる、ジャニーズの御法度を「新しい地図」が逆手にとってどんどんやっていましたよね。
ササダン 飲んだ上でのSNS投稿とか、あらゆるタブーに挑戦してた印象です。スポーツ選手だって禁止されてますからね、飲酒したときの投稿や、夜22時以降の投稿も禁止で、なぜかというと「思考が複雑化するから」って。
エスム いい表現ですね。「思考が複雑化する」(笑)。
岡室 ちょっと感動しちゃった(笑)。
エスム 『72時間』の森くんとの再会もすごかったですけど、私は稲垣さんがMXテレビの『5時に夢中!』にゲスト出演したことが衝撃で……。岩下尚史さんと上手に絡んでました。
ササダン スキマさんは72時間全部見てたんですか?
スキマ さすがに全部は(笑)。だいたい名場面と呼ばれているところは見ましたけど、やっぱり時間の使い方がテレビと圧倒的に違いました。それこそ森くんとの再会のところは6時間くらいやっていたでしょう? テレビだと編集で切っちゃうところを全部放送する。だから、どうしてもグダグダ感が出てきてしまうところがあるんですけど、それが番組としてそのまま成立したのは、3人のこれまでのドラマをみんなが共有していたからこそだと思います。
岡室 ジャニーズでは関ジャニ∞が活躍していた印象が強いです。『関ジャニ∞クロニクル』『関ジャム』。トークができるし、仲が良さそうな感じもいいですよね。
ササダン 岡室さんはやはり、村上(信五)さんのMCとしての才能に注目しているんですか?
岡室 村上さんもいいですが、私は丸山(隆平)くんが好きなんです。『泣くな、はらちゃん』での演技が素晴らしかったから。
エスム 私も好きです。顔を含めて(笑)。
スキマ 『関ジャム』みたいなちょっとマニアックな音楽番組をポップに見せることができるのは、関ジャニ∞のタレント性あってのことだと思います。
『今田×東野のカリギュラ』にゴマキの弟が出たという意味
岡室 話を戻すと今年は「新しい地図」以外にも、ダウンタウンの松本(人志)さん、浜田(雅功)さん、明石家さんまさんと、続々とテレビスターが動画配信番組に出演した年でもあったと思います。
スキマ 出演者もそうですけど、作り手のスターも配信の世界で活躍されています。たとえばAmazonプライムで松本さんが出演した『ドキュメンタル』は『ごっつええ感じ』の演出家・小松純也さんが演出を手がけていました。
ササダン 「地上波ではできない」って言葉があるように、テレビと動画配信は敵対的であるかのように言われてますけど、実は地続きなところにあるものなんですよね。演者も制作者もテレビの人たちなんですから。
岡室 たしかにそうかもしれないんですけど、私、たまたま『今田×東野のカリギュラ』(Amazonプライム)を見たんです。ゴマキの弟の後藤祐樹が出た回。もうね、全身刺青なんですよ。それで、すっごい転落の人生を語る。だからなんだって話でもあるんですけど、ああこれは地上波ではできないなって思いました。
エスム ええっ、それは見たい。
ササダン 『カリギュラ』は第1回目が東野さんの鹿狩りでした。狩猟して解体して食べるという。これは反道徳的なことではないけれど、誰が見てるかわからない、不意に子どもが見るかもしれないテレビではできない企画。その意味では、まさに「地上波ではできない」。
岡室 地上波、つまり放送というのは基本的に、不特定多数に広く流す「ブロードキャスト」なんですね。一方で、ネットでの配信って見たい人が選択して視聴するっていう「コミュニケーション」。だから、リテラシーのあり方も当然違ってきますし、この先も放送と配信の線引きについて、いろいろ議論がなされるところだと思います。