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ピンチでも「他人が出したランナーだし」…“火消しの嘉弥真”はなぜ私をひきつけるのか

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/19

 長年、ジワジワと気になってしまっている人物がいる。

「火消しの嘉弥真」

 そう呼ばれている彼は、どこかの伝説の消防士ではない。

 今季でプロ11年目を迎えたホークスの左ピッチャー、嘉弥真新也投手だ。

 取材を始めたころは書くのに苦戦していた名字の「かやま」という漢字も、今ではスラスラとかけるようになった。

 控えめな印象で、見た目は小柄。

 2アウト満塁とか2アウト一、三塁などピンチの場面で登場し、左打者をキレキレの投球で抑えて、「火を消して」静かに颯爽と帰っていくのである。

 まさに職人、チームに欠かせない頼りになる唯一無二の存在だ。

嘉弥真新也

「ハブハブハブハブ マングース~♪」衝撃を受けた登場曲

 私がそもそも彼に興味を持ったきっかけは、ほんの一時期だけれど登場曲を「きいやま商店」さんの『ハブとマングース』にしていたことだった(現在は「きいやま商店さん」の『頑張れよ!』。こちらも大好き)。

 私は老若男女、職種問わず「なんだか味のある、喋りかけると面白い人」が気になってしまう体質(ちなみにホークスで嘉弥真投手以外ならば髙田知季選手や田中正義投手も私の中でそれにあたる)。

 イニング途中の緊迫した場面で流れてきた、

「ハブハブハブハブ マングース~♪」という、球場のピリついた空気をガン無視した、とびっきり陽気なサビに……なんだ、この登場曲のセンスは!(笑)と衝撃を受けてしまった。

 いや、こんな局面でハブだのマングースだの言っている場合じゃないのにと(歌は最高です(笑)。ぜひ聞いてみて下さい)妙に可笑しくなり……一気に心を掴まれたのだった(※その後「ピンチの場面でこの曲が流れてくると空気が緩んでしまうから」という理由で曲を変えるよう、レジェンド斉藤和巳さんから助言を頂いたらしい。ごもっともです(笑)。そして繰り返すが歌自体は最高だ)。

 それ以降、嘉弥真投手って一体どんな人なのだろうと気になってはいたが、なかなか取材機会に恵まれずにいた。

 しかし、2018年のとある試合後、ついにご本人にペン取材をする機会がやってきた!

「実際の火事は福岡市消防局にお電話ください」

 ひととおり試合の振り返りを伺ったあと、私が意を決して「ファンのみなさんから『火消しの嘉弥真』と呼ばれていますが、そのことについてはいかがですか?」と聞くと、「嬉しいです」と笑った後に「……でも、実際の火事は福岡市消防局にお電話ください、とみなさんにお伝えください」とボソリ。

 ……なんということだ。

 ただ答えるだけじゃなく、気の利いた(?)一言を添えて下さったのだ。

 こんなことを言う選手だったなんて。

 マウンドでは火消し役なのに、私のハートには逆に火を付けてきた。

 それからというもの、より一層注意深く観察するようになった。

 一見静かな印象にみえたのが、仲良しで同級生のチームメイト岩嵜翔投手(現・中日ドラゴンズ)と話しながらなにやら楽しそうにニコニコしていたり……(私はこのコンビが微笑ましくて結構好きだ)中継ぎ陣の後輩たちに弄られても、穏やかに微笑みながらされるがままになっていたり。

 そして、笑顔が愛くるしいではないか……!!

 そう、彼は愛されキャラなのだ。

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