昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「ほぼ日ハム手帳」がこの夏、ファイターズの“ワンプレー”にフォーカスする理由

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/19

 ファイターズ全試合を愛用の手帳に記録し続ける「ほぼ日ハム手帳」のななつぼしさんである。彼女の手帳活動(と呼べばいいのだろうか?)は知れば知るほど「荒行」である。例えば冴えない試合をしてチームが負けたとしよう。大概のファンはゲームセットの瞬間、テレビのスイッチを切る。で、録画しといた『あちこちオードリー』を見始めるなり、お風呂に入るなりする。勝ち試合なら余韻に浸り、『プロ野球ニュース』で褒められるのを待ったりもするが、負けたらスパッと切り替えでしょう。ななつぼしさんはそこからネタ会議なのである。パッと決まることもあるが、先日は6時間に及んだという。

 野球の試合がそもそも長いのに、終了後6時間の会議って「荒行」以外のなにものでもない。つき合ってくれるのは通称「むすめ」として知られる実のお嬢さんだ。「むすめ」はネタのチェックやデータ確認などを担当されてるらしい。だから家内制手工業だ。ご家族の協力があって成り立っている。僕はななつぼしさんの熱量にいつも圧倒されるが、ご家族の熱量もまたハンパないのだと思う。

 そんなななつぼしさんがこの夏、注目しているポイントがあるという。ファイターズの夏は上沢直之&松本剛の骨折、新庄ビッグボス以下コーチ陣、主力選手がごっそり抜けたクラスター発生と、散々なものだったが、ななつぼしさんの目線は常にポジティブだ。(構成/えのきどいちろう)

ビッグボス

「このワンプレーが決め手だったとフォーカスしたいと思えるような試合が増えてきた」

――それは一体、どんな話なんでしょう?

「ビッグボスの野球を追ううち、ほぼ日ハム手帳でもちょっと違う傾向のまとめ方が始まったかなと思っているんです。(田中)瑛斗くんの七夕の初勝利の後、とてもいい戦いができていて……。これは偶然生まれたことなんですけど、ワンプレーを手帳に落とし込みたいと思う試合がポコッポコッと出てきたんですね。これまでは試合の流れを手帳に再現したいって思ってやってきたんですけど、試合の流れじゃなくてワンプレー」

――あ、それは試合を象徴するようなワンプレーってことですか?

「このワンプレーが決め手だったとフォーカスしたいと思えるような試合が増えてきた。このワンプレーを残しておきたいということです」

――あぁ、ななつぼしさんは面白いね。プロの企画みたいに「ワンプレーをフォーカス」って枠を先に決めるんじゃなくて、「思えるような試合が増えた」が先なんだね。それはもう、具体的にどの試合のどんなプレーか聞きたくなりますね。

「はい、まず7月10日のソフトバンク戦(PayPayドーム)です。3連戦の3戦目、2つ勝ってたのでスイープがかかった試合です。先発が池ちゃん(池田隆英)でした」

――あぁ、何か……、うろ覚えです……。

「はい、私も手帳見ながらしゃべってます(笑)。この試合勝って、ビジター同一カード3連勝っていうのは今季初めてで、しかも、前日までに対ソフトバンク7勝7敗でした。けっこう大一番です」

――あぁ、対ソフトバンク戦の勝ち越しもかかっていた。

「はい、この試合、9回2アウト満塁で、みっくん(堀瑞輝)がクローザーで出ていました。総力戦だったホークスはマッチ(松田宣浩)を代打で出してきます」

――あぁ、あったあった。あれはしびれる場面でしたね。

「スコアは2対0、一打同点の場面でした。で、結局、サードゴロをヤチヤチ(谷内亮太)がさばいてゲームセット。これ、フツーはヤチヤチのプレー描いて終わりなんですけど。私、あんまり敵チームの写真とか入れないんですが、ここでマッチを入れたくなったんです。あの打席のマッチの形相が凄まじくて、感動したんですね。一球に懸ける気持ち、一打に懸ける思い。で、この場面を『今日の大一番』ってタイトルつけて初めてまとめたんです」

――あの場面、スコアは動かなかったから何も起きなかったんだよね。何も起きなかったけど、野球の醍醐味が凝縮されていた。

「王者が総力戦で来たときに、集中力を欠かさず0点で抑えて勝っちゃった、すごい試合だったなっていうのをどうやって残そうか考えたときに、あのシーンを残したいなと思ったのが最初なんですよ。9回、1アウトから周東が出て、球場のボルテージがマックスになって、そこから2人出て満塁で代打マッチです。マウンドを見るとみっくんが青い顔をしてるし、マッチは決めてやるって形相だし。で、すごい当たりだったんですよ。火の出るような当たり。それを谷内が捕ってくれて。谷内も途中出場なんですよね。その準備のしかた、試合への入り方、打球への入り方。フルカウントまでなってるんです。すごかった。見たかった野球なんです」

――あぁ、ビッグボスの野球が瞬間最大風速的に「見たかった野球」まで到達した? 相手チームも含めてこれぞ「見たかった野球」だと。

「そうです。そんな感じです。でも、たまたまかなと思って、もう二度と起きなくてもしかたないや、今シーズンは土台作りだしと思ってたら、また起きちゃったんですよ。今度は7月16日のライオンズ戦(札幌ドーム)です。1対0で勝った試合です。うわっち(上沢直之)が先発で、骨折したときの試合です。ファイターズは今季初6連勝中で、エースを立てて7連勝するかもって状況でした」

この夏の苦闘1。BOSSたちが離脱して、山田監督代行の日 ©ななつぼし
z