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「ほぼ日ハム手帳」がこの夏、ファイターズの“ワンプレー”にフォーカスする理由

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/19
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「ボスは代役だろうと何だろうと勝負させますよね」

――西武はその時点で2位ですね。カード頭だからどっちも取りたい。

「5回まで試合が動かなくて、6回裏、おジェイ(野村佑希)の先制打で1点入る。で、その次の7回表の攻防を手帳に『今日の大一番』って書いてあります」

――二度目の「今日の大一番」。今回もファイターズは守備ですね。

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「はい、ここで両軍がかけひきをした。回のあたま、うちは守備の変更をします。サードからファーストにおジェイ(野村)が行って、サードに谷内が入ります。で、ワンアウト2塁になったところで打球がうわっち(上沢)を直撃して治療します。それで、いったんベンチに下がったうわっちがもういっかいマウンドに上がります。手帳には『そのときベンチが動いた』って書いてあって、ワンアウト1、3塁になるんですけど、西武はサードランナーを代走の長谷川(信哉)くんに代える。そうしたら今度はボスがサード野村くんとファースト谷内を入れ替える。で、打席にはハルキチ(山田遥楓)が入る。完全にスクイズ警戒モードですよね?」

――おお、熱い場面ですね。

「で、ハルキチがスクイズいっかい失敗して、次に西武はファーストランナー山野辺(翔)でエンドランを狙いに行くんだけど、これもハルキチが失敗します。だけど、山野辺が二盗に成功してワンアウト2、3塁の大ピンチになります。で、ハルキチ打つんだけど、セカンドピンちゃん(石井一成)がライナー捕って、3塁走者長谷川飛び出しゲッツーでチェンジ。これもやっぱりスコアは動かなくて何も起きなかったんです。ですけど、両軍のかけひきがすごいなと」

――あの回、野村をサードからファーストにまわして、途中でまたサードに戻したのが話題になりましたね。

「その晩の『プロ野球ニュース』でも取り上げられました。スクイズ警戒だったので、慣れてるおジェイ(野村)を持ってきたってことでした。この辺の1点を取りに来るライオンズの辻(発彦)さんと、必死に守りに行くうちのビッグボスのかけひきですね。で、その後、ファイターズのリリーフ陣が踏ん張って、最後、みっくん(堀)で締めて7連勝ってところですね」

――両軍の監督が一手打つごとに緊張が増して、野手の集中力もグーンと高まりましたね。この場面、何をしたらいいか。何を準備するか。だからゲッツーも偶然じゃなくて、こうなったらこうだと石井ピンちゃんの頭で整理されてたというか。

「はい、そのグーンと高まってく感じを手帳に書き込みたくて、最初スコアブック入れ込んじゃおうかなと思ったんですけど、スコアブック書いても伝わらないやと思い直して、写真を選んで、すごい力入ったページになりました」

――ななつぼしさんの手帳とファイターズはシンクロしてるから、試合を重ねてくなかで、面白いことが少しできるようになったんだろうね。ビッグボスの狙いと選手の集中とがピタッとハマって、名場面を作り上げるという。まぁ、チーム状況的にはその後、欠場者が相次いで一気に下降線を描くんだけど。

「でも、粘れるようになったと思いませんか。ボスは代役だろうと何だろうと勝負させますよね。チャンスの場面で梅ちゃん(梅林優貴)や片岡(奨人)くんをそのまま打たせるし」

――こないだは失敗したけど、望月大希を大事な局面でリリーフ起用したりね。お前をこの役割で使うんだから勝負して来いって。

「それがないと選手って変わらないと思うんですよ。成功したり失敗したり色々あるけど、それって一人ひとりの選手にとっては『今日の大一番』ですもんね」

この夏の苦闘2。伝説の6時間会議の日 ©ななつぼし

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