子どもたちには拒絶されたり、物投げられたり
澤本 僕らは、ただただ密着してありのままを撮るという感じでした。
最初は、お母さんの「あなたたちも一緒に子育てをするんだよ」という意味がわからなかったんです。でも密着していると家族のように過ごしていきますよね。そうすると兄弟喧嘩に立ち会ったり、夫婦の言い争いが目の前で起きたり、進路に悩む子どもがいたり、いろんな場面に遭遇するんです。でも我々はスタッフだから、どこまで介入すべきかわからない。
喧嘩しているところを何度も撮りましたけど、どこまでほっとくべきかは悩みました。本気の殴り合いをしたら怪我しちゃうじゃないですか。僕らは止めるべきなのか、それとも静観すべきなのか。そうやっていろんな場面に遭遇して、悩みながら一緒に生活することで、お母さんに言われた「一緒に子育てをする」っていうのを実感しましたね。
――思春期の子どもたちだと、それこそ「撮らないでほしい」とか「来ないで」とか言われたりも。
澤本 何度もありました。「撮ってんじゃねーよ」って物投げられたり。そりゃそうですよ、僕たちが最初に来た時、一番上は高校生でしたから。なんでこんなおじさんが家にいるんだよって普通思いますよね。自分たちの生活が全国に放送されるわけですから。
「またあいつら来たよ」と言いながらも、どこか信頼関係があった
――TVに出ることで周りから何か言われることは。
千惠子 それはあんまりなかったですね。
いつも先手を打っていましたから。近所の人は「TVの人たちが出入りしているからそろそろ特番やるな」とわかるので、その前に「いついつ放送ですので、よろしくお願いします~見てね~」って言っておく。だから妬まれたり、いじめられたりとかはあまりなかったですね。
澤本 子供たちは何も言われなかったかというと、そんなことないと思うんですよね。きっと学校で嫌な思いをした子もいると思うんです。
ただ、お母さんに「一回取材きて、次に来れないような取材をするな」と言われたので、必ず放送後、全員に「今回どうだった?」と聞くようにしていて。その時に少しでも本音が聞けたらなと思って。
千惠子 その思いがみんなに伝わっているんだと思います。みんな「またあいつら来たよ」とか言いながらも、どこか信頼関係があるんですよ。一番下の子なんて物心つく前からTVに出演していますし。ずっと付き合ってきた澤本さんだからこそ、心を開いていると感じる部分はありますね。