旬な人が深くハマっている趣味について聞く連載「ハマる人」。ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さんが東京ヤクルトスワローズ愛について語った全文を「週刊文春WOMAN2022年夏号」より公開します。(全2回の2回目。前編を読む

尾崎世界観さんは、野球がきっかけで、彼女とよりを戻したこともあったという ©Nobuyuki Seki

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野球がきっかけで、彼女とよりを戻したこともあった

 野球は、サッカーなどと違って、一回一回プレーが止まり、間があるスポーツ。

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「観ている側が感情を乗せる時間があることも野球の魅力です。自分の気持ちを一球一球に託して、自分のこととして考えながら見ることができる。昔、バイト中にこっそりテレビ観戦していた時、大量失点している最悪の場面で、もしこの後を無失点で抑えられたら、別れた彼女に連絡しようと勝手に投手に思いを託したんです。

 結果、ヒットになりそうな打球に二塁手が飛びついてアウトにした。それで、久しぶりに連絡して一緒に野球を観に行って、よりを戻したこともありました(笑)」

 20代前半、バンド活動がうまくいかず、野球を観に行く余裕がない時期もあった。しかし、26歳頃、友達と観に行った映画があまりにもつまらなくて、口直しにと数年ぶりに球場へ足を運んだ。

「席はガラガラで、これは自分が何とかしなくてはと、球場通いを再開しました(笑)。真中満監督時代に96敗したシーズンは、もう意地になって観に行っていました。『俺が応援に行って連敗を止めるぞ!』と調子に乗って行くんだけれど、やっぱり負けてしまって(笑)。

 それでも野球は最後まで何が起こるか分からない。10-0で負けていても、一気に逆転勝ちすることもある。ギャンブルはやらないけれど、それに近い感覚で、心の中で思いを賭けているんです」

©Nobuyuki Seki

 尾崎さんの日記エッセイ『苦汁100%』『苦汁200%』にも、ヤクルトの勝敗に一喜一憂するファン心理が垣間見える。