昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

日テレの中継はなぜすごいのか?

西本 1月1日のニューイヤー駅伝と、2日・3日の箱根駅伝、どちらが選手のレベルが高いかといったら、当然ニューイヤーなんです。じゃあ何が違うかというと映像技術。聞いた話によると12月のガキの使いの「笑ってはいけない」シリーズの収録には、日テレ系列局中のカメラがかき集められるらしいんです。そのカメラが、今度は全部箱根に行くらしい。とてつもない数のカメラが選手を追いかけるわけです。

 そして、各区間には襷わたしをする中継所だけでなく、固定中継ポイントがあるんです。そこで、先頭とのタイム差を1区間の中でも何回も確認できる。つまり、箱根駅伝はどこから見ても、すぐにレース状況が把握できるようになっているんです。それは色々な角度から撮影をしているわけです。

 あとは明らかに総合演出が効いてる。ここはこういう風に見せたい、感じさせたいという、スポーツ報道とは違うドキュメンタリー的な演出なんです。しかも1週間もたたずに「もうひとつの箱根駅伝」が放送されます。ちょっと映像編集をかじった人なら、わかると思うのですが、バイクや監督車などあらゆるカメラが撮影した10時間以上の映像をデジタイズするだけで、大変です。その映像をこの短時間でドキュメント番組にするなんて、ほんと素晴らしいですよ。

マニア ゴール前で待ってるとリハーサルやってますもんね。ADみたいな人が何度も何度も走って、繰り返しゴールシーンをやらされてるんですよ。そのたびに沿道から「がんばれ~!!」って拍手が起きる(笑)。ゴールにリハーサルのあるレースなんて他にないです。

2017年の箱根駅伝を制した青山学院 ©文藝春秋

何てことないコーナーが「箱根遺産」に見えてくる

西本 カメラワークが徹底されているところも日テレの箱根駅伝の面白さなんです。毎回、同じ景色を同じように撮る。良い意味でマンネリにすることで、たとえば「高野コーナー」(2011年第87回大会で、早稲田の高野寛基が凍結気味の路面で転倒したカーブ)。「ローリング族禁止」と書かれた何てことない6区のコーナーが、突然「高野コーナー」として輝きを放つ。何でもないものが、「箱根遺産」に見えてくるんですよ。

ポール 一度見に行きたいと思っている人は、まずはテレビでじっくりと沿道の状況をチェックするといいですね。

西本 何も考えず、軽はずみに見に行ったら、観客の熱に圧倒されて何もできないまま終わってしまいますから。あっ、ここが空いてた。と思って、選手を待っていても、観客が突然、目の前で読売新聞の旗を振り始るから、何も見えなかったってことは「箱根あるある」ですからね。

マニア 確かにそうですね。

人の少ない穴場で観戦したい

西本 苦労して行ってみたけど人垣で見れなくて、よく分からないまま「なんだ箱根、何も見れないじゃん」って嫌になって帰ってくるのを僕らは一番懸念してるんです。そうやって箱根を嫌いになってもらいたくない。箱根駅伝の沿道には観戦歴何十年という猛者が「主」のようにいますから。行き当たりばったりに沿道に行かずに、まずは日テレの事前番組をしっかり見て、この辺は人が少ないなとか、あの場所に行ってみたい。と確認してから現地に行くとよりいっそう楽しめる(笑)。

マニア たしかに。あと、人がいる、いないも大切ですね。たとえば9区の横浜駅前は激混みです。ニュースさんが毎年観戦している5区の山中は人いないですよね。

西本 5区は小涌谷を越えると、空いてきます。僕は例年、箱根湯本駅からカメラをかついで大平台手前のヘアピンカーブ下くらいまで走っていきます。全選手が通過した後は下りながら写真をスマホに取り込んでいると、遠くの方で花火の音がするんですよ。ああ、ゴールしたか、と感慨にひたりながら湯本まで降りてきて、空きっ腹にサッポロビール(箱根駅伝好きはだいたいサッポロビールが好き)を飲んで、早川の河原で寝てます。

右から西本さん、マニアさん、ポールさん

マニア 箱根だけでなく、1月1日のニューイヤー駅伝から動いてますからね。ぼくら朝から飲まず、食わずですし。

ポール 食事のことは考えないですよね?

マニア 集中しすぎてて考えたこともない。

西本 僕ら、前日からニューイヤー駅伝のために、群馬—東京を往復してますからね。1月1日〜3日の駅伝3daysの移動距離はハンパないですから。往路、終わった後にサッポロビールを飲むとふらふらになるんです。

ポール 僕はゴール後は芦ノ湖で青学の友人から豚汁頂いたりしてますよ。

西本 マジで!? それ、知らなかった……。

構成/モオ 撮影/榎本麻美