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 一方で、やはり中学時代に左利きながら140キロを投げていた藤原には、入学の段階から外野手一本で勝負させてきた。選手の適性を見抜き、高校野球で、あるいはその先においても、選手が最も輝くポジションを西谷は見出していく。

履正社監督が語る「大阪桐蔭はそつのない野球をします。特に走塁面」

 今年の大阪桐蔭を最も苦しめたのが大阪で雌雄を争ってきた履正社だ。今夏、北大阪大会の準決勝で対決した履正社は、9回2死という勝利目前までライバルを追い詰めながら、逆転を許した。監督の岡田龍生は、夏の大阪大会で大阪桐蔭に11連敗。苦汁をなめ続けている。

「同じ選手相手に負け続けているのなら僕も気にしますが、毎年、チームは変わっているわけやから……。毎年の集大成の試合で負けているというだけ。確かに大阪桐蔭はそつのない野球をします。特に走塁面」

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 大阪桐蔭では、「一打二進」という言葉を走塁におけるチームスローガンに掲げている。単打の当たりでも隙あらば二塁を狙う意識を忘れず、塁上の走者は一打でふたつ先の塁を積極果敢に狙っていく。

「走塁というのは、練習で数をこなさないと、ゲームで起こるあらゆる状況に対応できないんです。大阪桐蔭の走塁から、いかに実戦を想定した練習をこなしているかが伝わってくる」

藤浪晋太郎と森友哉の記憶

 西谷は甲子園の開幕前に全出場校に割り当てられる30分の甲子園練習すら、無駄にすることはない。同校OBで、12年に春夏連覇を達成した時のエース・藤浪晋太郎(阪神)が以前、こんなことを話していた。

「大阪桐蔭では、甲子園の芝の状態を確かめたり、甲子園球場の特徴を確認したり、甲子園のグラウンドでしかできない練習に30分を使っていた。他の高校は、紅白戦をやったりして、思い出作りも兼ねていた。常に日本一を目指す大阪桐蔭の選手として、そんな学校には絶対に負けられないと思っていました」

大阪桐蔭出身の中田翔、藤浪、西岡

 その藤浪とバッテリーを組んでいたのが、1歳下の森友哉(西武)。中学卒業時、特攻服に身を包むようなやんちゃ少年だった森は、西武入団直後から期待されてきた打力に加え、守りでも今季、正捕手の座を射止めた。この西谷が誇る教え子は、在学中、西谷に褒められた記憶がないという。

「ほんまに怒られてばかり。しんどい思い出しかない。部員全員が寮生活する大阪桐蔭の練習は長いんですけど、ダラダラとした練習はなく、細かく状況を設定したシート打撃で、状況に応じたバッティングを求められた。そういう実戦練習をたくさん経験しているからこそ、大阪桐蔭のOBはプロで活躍するケースが多いんだと思います」