知恵袋で「父親の余命」を質問
足立被告の父親・富夫さんがインスリンによって意識障害に陥る前の2017年、Yahoo!知恵袋に足立被告のものと思われるアカウントから、複数回にわたって富夫さんの余命についての質問が投稿されていたとの報道には衝撃を受けた(「週刊文春」2018年7月5日号)。〈人それぞれ個人差もあり、一概には言えないでしょうが、どれくらい生きれるのか、教えてください〉(2017年1月)、〈正直なところ、多少の覚悟はしてますが、余命は何年ぐらいでしょうか?〉(同年9月)。さらに弟の聖光さんの葬儀後には、同アカウントで〈何か告訴できるもの、損害賠償請求できる要素はありますか?〉と質問している(2018年5月)。足立被告のこの質問からは、聖光さんは自殺であるのに義妹に疑われている、という主張が読み取れる。
一連の事件が明るみに出たのは、足立被告の弟・聖光さんの死に不審な点が目立ったためだった。今一度、2018年当時の状況を振り返りたい。
“練炭自殺”にまつわる検索履歴
現場となったのは実家兼会社の建物で、1階に水道工事会社の事務所があり、2階が居住部分(実家)として使われていた。2018年3月の事件当日、2階の実家には足立被告と、聖光さん、母親の3人がいた。聖光さんの妻が足立被告から連絡を受けて駆けつけたところ、2階トイレの床に座り込んだ状態で意識を失っている聖光さんを発見した。足立被告の母親は2階リビングで横たわっており、呂律が回っていなかったという。母親はのちに大阪府警に対し「朱美が作った抹茶オレを飲んだ直後に意識がもうろうとなり、気付いたら聖光が死んでいた」と説明している。聖光さんは病院に搬送されたが、死亡が確認された。
聖光さんが発見された直後、おもむろに足立被告は聖光さんの妻に「父と姉のために金策に走り回ったが、お金を借りられなかった」「自分が(父親の富夫さんに)インスリンを打った」という内容が書かれた“遺書”を手渡している。後に府警が押収した足立被告のパソコンを解析した結果、同様の文言がワードで入力された形跡がみられ、実家のプリンターで印刷された可能性があることがわかった。さらに足立被告の携帯電話には“練炭自殺”にまつわる検索履歴が残っていたという。
現場となった2階のトイレには、一見、聖光さんが自殺を図ったかのような光景が広がっていた。だが、トイレは接着剤で目張りがされていたにもかかわらず、接着剤の容器は別の部屋から見つかった。本来であれば容器はトイレ内から見つかるはずだ。また、トイレタンクの上には練炭が鍋に入った状態で置かれていたが、火を付ける道具がトイレ内に見当たらなかった。これも接着剤と同じく、自殺であればトイレ内にあるはずのものだった。