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花園エリア一帯の土地を買い占めた“人物”

 最後に立ち寄ったのが花園エリアだ。ここは他の3つのスキー場とはやや趣が異なり、まだそれほど開発が進んでいないエリア。ここにパークハイアットがオープンしたことが不思議になるほど地味なエリアに見えた。この地での開発案件の相談があったので立ち寄ったのだが、現地で詳細を聞いて驚いた。

 この花園エリアの主要な開発適地はすでにすべてが香港の開発事業者に押さえられているというのだ。その会社の経営者はリチャード・リー氏。彼は香港の開発会社パシフィック・センチュリー・プレミアム・ディベロップメンツの総帥。あの東京駅八重洲口にある超高層オフィスビル、パシフィックセンチュリープレイスの元所有者である。

 彼はこのビルを2006年、当時のファンドマネジメント会社ダヴィンチに約2000億円で売却したのだが、彼はその多額の売却益で実はこの花園エリア一帯の土地を買い占めていたのだ。当時別のファンドマネジメント会社に在籍していた私は、彼とこのディールをめぐって顔を合わせた記憶がある。私の会社の出し値は1500億円。彼はにこやかに笑って、以降うちの会社には顔を出さなかった。結果はダヴィンチがこれを買い、その後この会社は債務超過で倒産する。私の在籍した会社も結局同じ運命をたどったのだが、感慨深いものがある。

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2030年、北海道新幹線が開通すれば…

 不動産投資では吹き上がる物件を追いかけてはだめである。ニセコ開発時の日本企業は平成バブルでニセコの優良資産を手放す。その後もファンドバブルに乗り、リー氏が売りに来たオフィスビルを高値掴みしてしまう。そしてリー氏は稼いだ金で次なる宝の山をちゃんと見据えて一気に投資する。

 実は花園エリアは、今はやや閑散としているが、北海道新幹線が2030年度に開通するとこのエリアに開業する新駅から一番近いエリアになるのだという。今はこの情報を聞きつけた日本の不動産業者が(私を含め)大勢現地に駆けつけてくるが、時すでに遅しなのだ。無理に土地を買おうとする我々に、リー氏はきっと猛烈な高値を付けたうえでにこやかに売ってくれるに違いない。懐かしい名前とあまりの才覚の違いに呆然としながら現地を離れた1日だった。