バブル崩壊に苦しみ、外国資本に売却
バブル崩壊の爪痕が色濃く残るニセコに目を付けたのは90年代にこの街にふらりとやってきたオーストラリア人だったという。彼らはニセコの自然環境に感動し、この地に移住を始める。そして夏はトレッキングや尻別川などでのラフティング、冬はスキーを楽しみながらホテルやコンドミニアムの建設を始め、2000年代になるとこの情報を聞きつけたオーストラリア人スキーヤーでにぎわうようになる。
ニューヨークのテロなどの影響もあって、カナダのウィスラー、スイスのサンモリッツなどのスキー場に行くことを躊躇したスキーヤーが、時差のないニセコを楽しむようになったのが時代背景である。
2010年代以降は、オーストラリア人に加えて、中国などアジア系のスキーヤーも増え始めた。彼らは当初はスキーを楽しむような習慣がない、自国で雪を楽しめる場所がないのでスキーをそもそも知らないなどで、顧客対象にはならないとされていた。ところが今では富裕層が急増し、欧米のスキー場にも足を運び、スキーを楽しむ人が増加したこと、ニセコなどのリゾート地に別荘を持ち、資産ポートフォリオを充実させる人たちが増えたことなどから一気にアジア人の割合が増えたのだという。
こうした外国人ニーズを既存の日本資本は捕まえられたのかといえば、全く逆であった。バブル崩壊に苦しむ中、東山プリンスホテルはマレーシア資本に買収され、プリンスブランドから高級外資系ホテルブランドであるヒルトンに変わる。東急も開発適地の多くを外国資本に売却してしまい、日本資本が中心になることはなかった。まことに残念なことである。
外国資本の温泉旅館やホテルが新オープン
現在のニセコは、コロナの影響はたしかにあり、現地で聞いてもこの2年間のインバウンド客は激減し、多くの宿泊施設や飲食店が閉館、閉店したままのところが多い。だが、そのいっぽうで、ヒラフ付近にはシンガポール資本による新しいホテル「雪ニセコ」がオープン。韓国資本、マレーシア資本などによる開発工事も活発に行われている。2020年には花園エリアにパークハイアットニセコHANAZONOがオープン。ホテルから直接ゲレンデにアクセスできる立地は人気が出そうだ。また東山エリアではリッツカールトンがオープン。外国資本による温泉旅館「坐忘林」はゲレンデからやや離れているものの、グリーンシーズンの現在でも1泊で10万円を下らない宿泊価格を付けている。
2016年にヒラフで分譲されて話題になったのがホテルコンドミニアムの「綾ニセコ」だ。この建物は全79戸。坪当たり販売価格が600万円台。東京港区の新築マンション並みということで当時メディアでも騒がれたものだ。しかし現在の中古相場は坪当たりで900万円から1000万円だという。最上階のペントハウス(370㎡)に案内されたが、10億円を超えることになる。それでも中国をはじめとした外国人からの問い合わせは相当数あるのだという。