養子縁組をしていた大阪府高槻市に住む高井直子さん(当時54)を殺害した疑いなどで大阪府警福島警察署で勾留中だった高井(旧姓・松田)凜容疑者(28)が、9月1日朝、留置施設で心肺停止の状態で見つかり、救急搬送された。
この事件は、昨年7月26日に高井さんが自宅の浴槽で変死体となって発見されたもの。当時、高井さんには合計1億5000万円にも上る生命保険がかけられており、保険金の受取人は高井凜容疑者だった。真相解明の一助になることを願い、「文春オンライン」の記事を公開する(初出:2022年8月28日 年齢、肩書等は当時のまま)。
◆◆◆
「直子さんを殺害した2日後、凜さんはいつものように赤坂のタワマンから見える夜景をバックに、涼しい顔でチームのzoomミーティングに参加していました。フォーメーションの確認をしたり『明日はこういう練習をしよう』と提案したり、いつもと全く変わらない様子でした。次の日は朝9時から多摩川べりで練習にも参加し、和気あいあいと雑談しながらボールを投げていました。3日前に人を殺していたなんて、一体どんな精神状態だったのか想像もつきません」(高井凜容疑者が所属していた社会人アメリカンフットボールのチームメンバーA氏)
大阪府高槻市に住む会社員の高井直子さん(54)が2021年7月に自宅の浴槽で溺死した事件で、大阪府警は8月25日、養子の高井凜容疑者(28)を殺人と詐欺未遂などの疑いで逮捕した。
◆ ◆ ◆
凜容疑者は7月に有印私文書偽造などの容疑ですでに逮捕されており、ついに“本命”の殺人容疑での再逮捕となった。凜容疑者は外資系保険会社で働いていた際に顧客の直子さんと知り合い、事件の5カ月前に養子縁組を行っていた。直子さんには約1億5千万円の保険金がかけられ、その受取人は凜容疑者に設定されていた。
女装姿でマンションを出て特定を警戒?
直子さんの死因は溺死だったが、遺体の手首に結束バンドで縛られたような跡が残っており、警察は2月に他殺と断定。事件性が疑われたため保険金は支払われなかったが、養子として既に約1億円を相続していたという。捜査で浮かび上がってきたのは、凜容疑者の異常なほど冷静、かつ用意周到な犯行だった。社会部記者が解説する。
「凜容疑者が直子さんを殺害したのは、2021年7月22日の午後とみられています。逮捕まで時間がかかったのは、凜容疑者が普段住んでいる東京から大阪の犯行現場までの行き来をたくみに隠蔽し、警察が防犯カメラなどで足取りを追うのに時間がかかったためでした。22日の朝に赤坂の自宅を出た時はなんとウィッグをつけた女装姿で、その後も何度も服装を替えながらわざわざ新幹線を乗り継いで大阪に向かう姿が確認されています。GPSの位置情報を特定されるのを避けるためかスマホも自宅に置いたままで、事件翌日には直子さんの携帯からメールを『予約送信』させていて、生存を偽装する意図があったと見られています。事実だとすれば最初から完全に殺害と隠蔽を意図していた凶悪な計画犯罪ということになります」