マクロン大統領が目論む「2022年の再選」と「外交シフト」
マクロン大統領がこれだけ急いで改革を行ったのには、とにかくはじめの1年で大きく変革して、結果を待ち、2022年の再選を狙うという目論見がある。果たして、実際に雇用状況は改善するのだろうか。それとも組合や世論が危惧するようにただ解雇が増えてしまうのか?
世界的に景気がいいとはいえ、少なくとも短期的には、従業員を解雇しやすくなった余波が及び、国際企業などでの集団解雇がマスコミをにぎわすことは間違いない。そのため、マクロン大統領の支持率も再び下落するかもしれない。しかし、ポピュリストであったサルコジ、オランド両大統領とは異なり、国民と一定の距離を置くスタンスのマクロン氏は、一喜一憂することはないだろう。
2018年、マクロン大統領は外交に重心を置くようになると思われる。フランスでは、アメリカと違って内政は首相の責任である。経済産業デジタル大臣時代からの「マクロン・マター」だった労働法改正が終わったので、内政でわざわざ矢面に立つ必要もない。
ドイツが組閣すらできない状況が続くなかで、マクロンの外交シフトは、EUひいては国際情勢全般にとって好都合である。なぜなら、EUで勃発している諸問題の「仲介役」をマクロン大統領が果たすと期待されるからだ。
現在のEUでは、ポーランドやハンガリーによるEU基本理念からの逸脱行為や、賃金格差による東側から西側への労働者の流入など、「EU内部の東西問題」が顕在化している。「エルサレム問題」に象徴される中東問題も喫緊の課題としてあげられるだろう。
さらに言えば、マクロン大統領には、アメリカの暴走に歯止めをかける最後の砦としても機能することが有望視されているのだ。