「秋には、政権を揺るがす大混乱が国内で起きるだろう」。2017年5月、マクロン大統領が誕生した時、フランス中の誰もがそう思っていた。

 2016年春、オランド大統領のもとでエルコモリ労働大臣が労働法改正を行ない、連日激しいデモに見舞われていたが、マクロン氏は、選挙戦中から労働組合が「XXLサイズ」と皮肉を込めて呼んだ、よりドラスティックな「労働法改革」を掲げていた。そして大統領に当選するとすぐに公約通り法改正に着手。しかも国会から授権されて政令で立法するオルドナンス(委任立法)という手法を使って、9月に労働法改正を実現し、企業の解雇手続きを簡略化。国会審議を封じ込めた。

エマニュエル・マクロン大統領 ©getty

 マクロン政権の支持率は急落した。たとえばJDD(ジャーナル・ドゥ・ディマンシュ)紙では、2017年6月には64%あった支持が8月には40%にダウン(フランスの世論調査機関であるIfopのデータに基づく)。一般的に、大統領選出から3カ月間は「100日間の恩赦期間」といわれ、国民もあまり批判せず様子見する時期だ(サルコジ氏などは同時期に65%から69%にあがっていた)。

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ふと、あの「異色の宰相」の顔がよぎった

 ところが、冒頭の「2017年大混乱」予想は見事に外れた。デモは起きたが、その動きは全国的に広がらなかった。それどころか、12月17日付のJDD紙では支持率52%に回復したのだ。調査機関Ifop関係者は「近頃、フランス元大統領たちの支持率はいったん低迷すると誰一人として回復していない」と語っている。JDD紙とは別のメディアでも、マクロン政権の支持率は30%で底を打って横ばいから上昇。異色の大統領だといえる。

 増え続ける失業、社会格差、治安の悪化。サルコジ、オランドは何の結果も出せず、事態はますます悪化するばかりだったフランス。そこに、彗星のごとく現れて、当選。すぐ後の日本の衆議院にあたる国民議会選挙でも圧勝して「マクロン改革」を断行……。

 マクロン政権の大躍進を目の当たりにして、私の頭には、ふと、あの異色の宰相小泉純一郎元首相の顔がよぎった。