前編では、「宴たけなわ」となるかもしれないと2018年日本の不動産を予測した。しかし、世の中そんなに良いことばかりは続かない。一見すると死角がないかのように映る日本の不動産、実はかなり脆弱なシャシーなのに猛烈なスピードで突っ走るポンコツ車なのである。 ※「前篇 バブル再燃! 絶好調『宴たけなわ』のシナリオ」から続く

 後編の今回は、2018年日本の不動産を次のように予測する。

1.「金利」と「有事」で逆回転となる不動産マーケット
2.需要なきオフィスビルマーケットでのテナント争奪戦の始まり
3.投資家不在で消えるマンションマーケット
4.民泊でお金稼ぎは「夢のまた夢」
5.逃げる外国人、立ちすくむ日本人不動産投資家

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制約が少なく権利が強い日本の不動産は外国人に大人気

 日銀によるマイナス金利政策の継続によって金融機関は青息吐息の状態に陥っている。日本は先進国の中でも異常な低金利政策を続けている。この状態は運用先が枯渇する金融機関にとっては地獄のような環境にあるが、資金を借りて投資を行う不動産投資家にとってはこれほどの快晴状態はなかなかない。

 外国人の目からも日本の不動産は実に魅力的だ。日本国内で不動産を買う場合、外国人に対してはほとんど何の制約もなく、しかも所有権はかなり強い権利として保護される。この日本人にはあたりまえと思われる不動産の所有権、海外に出れば多くの国では外国人が不動産を取得する際には様々な制約がある。土地の所有権の多くは借地権や賃借権であるし、そもそも外国人が100%不動産を所有できる国は少なく、過半を自国人が所有する必要がある国が多いのが実態だ。

 こんな金利が低くて安全な日本の不動産だが、金利は下がることがあれば上がることもある極めて恣意的な存在だ。日本は安全などと多くの日本人は漫然と思っているが、戦争が終わってからわずか70年強。日本や世界の歴史を紐解くならば、むしろ平和が長く続くことのほうが歴史的には稀なのである。

「金利」「有事」のリスクが高い2018年

「金利」と「有事」を甘く見ないほうが良い。2018年はこのどちらの要素も問題が勃発する可能性が高いからだ。いうまでもなくアメリカは度重なる利上げをすでに計画している。その影響が日本にとって円高に出るか円安に振れるかは専門家の間でも意見が分かれるが、日本の金利がこれ以上に下がる可能性は少ないといってよい。

 金利の上昇は借入金に頼る不動産投資の世界には確実に効く効果的なパンチとなる。

 北朝鮮のみならず世界中のどこでテロや戦争が起こってもおかしくない時代、日本だけが惰眠を貪れるはずはない。「安全な国、日本」というキャッチフレーズなどミサイル一本の着弾で粉々になるのだ。

「安全な国、日本」などというキャッチフレーズはミサイル1本の着弾で粉々に ©iStock.com

「金利」や「有事」などの外部環境が不変であっても、日本の不動産が2018年も大成長する保証はどこにもない。

 前編では、現在都心5区を中心に航空母艦のような巨大ビルの建設ラッシュだと書いたが、低金利の金融環境でじゃぶじゃぶお金を借りられるのならば、誰でも巨大なオフィスビルを「こしらえる」ことはできる。アクセルさえ踏めばどんなに脆弱なシャシーの車でも一応スピードは上がるのだ。だが、問題はそこに誰が入るかだ。

アジアの金融センターは香港やシンガポールに

 大企業でなければ高い賃料を負担してこの巨大ビルに入居することはできない。ところが日本の大企業の多くは実は国内ではなく海外で稼いでいる。日本に多くのオフィスを借りる必要のある企業は少なくなっているのが実態だ。国や都はお得意の国家戦略特区を持ち出して外資系企業をテナントになどと嘯(うそぶ)くが、アジアの金融センターは、アジアの主要都市におおむね4時間以内にアクセスできて、誰でも英語がペラペラ話せるシンガポールや香港であり、7時間半もかかる「アジアのファーイースト、東京」ではないのだ。

 現在建設中のビルのほとんどは既存ビルの建替えだという。今のオフィスビルマーケットの好況は建替えのために既存ビルから追い出された企業がやむなく現在空いているビルに入居して、空室率が低くなっているにすぎない。2018年後半以降続く航空母艦ビルの竣工はテナント需要が伸びない日本では、再び多くの空室をマーケットに生み出すことになりかねないのだ。